毎年シーズンカレンダーの最後に設定され、本場ツール・ド・フランスの名を冠し多くの出場選手が来日する「J:COM presents 2024 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が11月2日、JRさいたま新都心駅周辺の周回コースで開催された。今年の最終ステージ後の「第22ステージ」として開催されるこの大会も10回目の記念大会を迎え、欧州トップレーサーたちの競演も熱を帯びた。
雨中、臆せず観客に見せた「本場の争い」
第10回の記念大会を迎えた本大会も、史上初めて黒人系選手としてステージ3勝を遂げ、マイヨ・ヴェール(ポイント賞)を獲得したビニヤム・ギルマイ(エリトリア/アンテルマルシェ・ワンティ)のほか、現役最後のツール第1ステージを制し、母国のファンが感動に涙した山岳賞経験者のロマン・バルデ(フランス/チームDSM・フィルメニッヒ・ポストNL)、レジェンドであるクリストファー・フルーム(英国/イスラエル・プレミアテック)、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー/アルペシン・ドゥクーニンク)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア/レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)ら、本物のトップレーサーがこぞって来日。あいにくの雨でレース中のスピードは上がらなかったが、ポイント賞や山岳賞の周回では、その中でも激しい鍔迫り合いを日本の観客に見せつけた。
ポイント賞(2周目、6周目、10周目、14周目)と山岳賞(4周目、8周目、12周目、16周目)を目指し、その直前に集団から有力選手が飛び出し、毎回競り合いを披露した。ポイント賞争いでは毎回フィリプセン、カヴェンディッシュ、ギルマイがスプリントを展開。そこに新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が加わる場面もあった。山岳賞ではフルームやバルデが競い、観客を沸かせた。特にフルームは一度逃げ集団を形成するなど終始積極的に展開を主導し、敢闘賞を獲得した。
ラスト2周が緊張感溢れる展開に
レース最終盤、16周目に設定された最後の山岳賞ポイントを目指してなのか、新城幸也、ロマン・バルデ、プリモシュ・ログリッチが飛び出す。これまでは雨を気にしてペースアップがあまり見られなかったが、この3人はその先も見越し、集団からのリードを築こうと協力してペースをあげていく。
ログリッチのペースに追いつけずバルデと新城が徐々にこぼれ落ち、ラストラップはログリッチと集団の追い比べとなった。ゴール直前まで何度も後ろを振り返りながら、数秒の差で逃げ切りを狙っていたログリッチ。最後のアンダーパスを登り終えて残り300m付近までリードを保っていたが、アンダーパスの下り、上りを越える勢いを生かして集団が襲いかかる。
その中から飛び出したギルマイ、フィリプセン、カヴェンディッシュがさらにスピードに乗って抜き去ろうとするが、ログリッチも粘りに粘ってフィニッシュライン直前まで先頭をキープ。最後、ほんの手前数メートルでギルマイが捉え、先にフィニッシュラインを通過。初来日で見事栄冠を獲得した。
RESULT
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 1:35:09 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) | |
4位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
5位 | ニコラス・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン) | +0:05 |
6位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
7位 | 初川弘浩(愛三工業レーシングチーム) | |
8位 | サンディ・デュジャルダン(フランス、トタルエネルジー) | |
9位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | |
10位 | 天野壮悠(シマノレーシング) |
優勝者コメント ー ビニヤム・ギルマイ
以前から周囲に日本はいい国だと言われていて、2年前から来たかった。来日できて本当に嬉しいし、勝ててさらに嬉しい。今日は雨だったが、それでも日本の観客の皆さんはたくさん詰めかけてくれ、声援を送ってくれて感動した。僕の名前を呼んでくれているのを聞いた時は本当に感極まったよ。
畑中選手の引退セレモニー、サプライズで行われる
表彰式の後に、今年で現役引退する畑中勇介(キナンレーシング)の引退セレモニーが行われた。本人には伝えていなかったようだが雰囲気で分かったらしく、雨で汚れたジャージではなく、新しいジャージに着替えて登場。チーム監督から花束を贈られ、「自称だけど、世界一幸せな自転車人生だった」と感謝の言葉を述べた。最後はチームメイトや関係者に胴上げされ現役生活を締めくくった。