【2025さいたまクリテリウム】シーズン最後の「日本のツール・ド・フランス」、ヴィンゲゴーが初勝利

2025シーズンの最後となる「J:COM presents 2025 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が11月9日、JRさいたま新都心駅周辺の特設コースで開催された。当日は朝から断続的な降雨となっていたが、メインレース開始直前に雨が止む幸運が訪れた。国内外選手、そしてこの日を楽しみにしていた日本のサイクルロードレースファンにとっても、有終の美を飾る舞台が整った。当日の模様をお届けしたい。

シーズン最後が「さいたまクリテリウム」という僥倖

©️SSC

さいさま新都心駅周辺に設定された全長59.5kmのコースは、1周約3.5km×17周回するプロファイル。ヘアピンカーブが2つ、その他の6つのカーブもすべて直角で構成されており、非常にテクニカルな周回コースなので巡航速度は速くなりづらく、選手の姿をじっくりと見ることができるようになっている。

そしてこのプロファイルは、例年、さまざまな選手がチャンスをうかがい飛び出しを繰り返すことで、目まぐるしく見どころの多い展開を生み出している。今年はどの選手がどの場面で飛び出し、シーズン最後の勇姿を見せてくれるのか。

序〜中盤は日本人ライダーが勇姿を見せる

今年のメインスタンドは、さいたまスーパーアリーナのコミュニティアリーナとなった。多くの観客の面前でパレードがスタートすると、リアルスタートを待って飛び出したのはAstemo宇都宮ブリッツェンの2人。このレースが現役最後となる小野寺玲が、ファンに最後の見せ場をつくった。

リアルスタート直後に飛び出した小野寺玲ら
スタンドの大歓声を受け、アリーナ内を疾走するメイン集団
猛スピードでさいたまスーパーアリーナ周辺を走り抜けるプロトン

スプリントポイント獲得を目指し飛び出す、中村圭祐(ヴィクトワール広島)、安原大貴(マトリックスパワータグ)ら

そして序盤のスプリントポイント(2周目、6周目)を狙い、中村圭祐(ヴィクトワール広島)、安原大貴(マトリックスパワータグ)ら3人が続いて飛び出しメイン集団から一時期10秒以上の差をつける。

その後ろには、先月のジャパンカップクリテリウム同様、エースのジョナタン・ミラン(イタリア)の勝利をサポートするためリドルトレックが先頭となり、付かず離れずの差でメイン集団を形成し続けた。メイン集団の中には日本人ライダーも何人か残り、特に橋本英也(キナンレーシング)、新城幸也(チームソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)はポジションを随時変えながら機をうかがう。

一時期先頭に立った橋本英也(キナンレーシング)。ヴィンゲゴー、ログリッチを従えての逃げ集団だ

中盤はその橋本が一時期先頭へ飛び出し、沿道の観客から大声援を受ける。この飛び出しについていったのがヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク/チームヴィスマ・リースアバイク)、ヴァランタン・パレパントル(フランス/スーダル・クイックステップ)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア/レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)らトップライダー達。本命と目されるライダーが前に加わったことで遅れまいと、メイン集団からミランがカーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)を引き連れ再びチェックに動き出す。

この逃げのなかで8周目の山岳ポイントはパレパントル、10周目のスプリントポイントは追いついたミランが獲得したが、観客が沸いたのは10周目。スプリントで橋本がミランと本気の勝負を仕掛けわずかに敗れたが、日本のトップトラックレーサーが同じトラックでも活躍するミランとロードで対決したシーンは、さいたまクリテリウムならではの場面だった。

11周目に入ると、橋本がさらに積極的に仕掛け逃げ集団がシャッフルされる。そこに飛び込んだのは新城幸也。こちらも今日で引退となるトッシュ・ファン・デル・サンデ(ベルギー/チーム ヴィスマ・リースアバイク)、フランス選手権王者のドリアン・ゴドン(デカトロンAG2Rラモンディアール)とともにメイン集団を引き離しにかかるが、その後のスプリントポイント争いで吸収される。

その後13周目、コミュニティアリーナ入り口でなんとヴィンゲゴーが落車。心配されたがすぐに復帰、チームメイトのサポートでメイン集団に復帰した。

最後はこの2人の一騎打ち

©️Yuzuru SUNADA
©️Yuzuru SUNADA

終盤に入ると路面も乾き始め、どんどんレースペースが上がっていく。14周目の最後のスプリントポイント通過後、ログリッチ、ヴィンゲゴー、ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー/ウノエックス・モビリティ)、ベルギー王者のティム・ウェレンス(ベルギー/UAEチームエミレーツXRG)が飛び出し、メイン集団との差を一気に20秒以上へ引き離す。16周目にこの中からログリッチ、ヴィンゲゴーがさらに抜け出し、一騎打ちとなった。

最終17周目前半、お互いアタックのタイミングを図る中、さいたまスーパーアリーナへ向かう手前でヴィンゲゴーが一気に仕掛ける。ログリッチはついていけず大きく差が広がり、後半はヴィンゲゴーのウイニングランとなった。勝利を確信し、大きく手を広げ喜びを表しながら先頭でフィニッシュラインを通過、初めての日本での勝利となった。

©️Yuzuru SUNADA

レース終了後は、シーズン最後とあって沿道で選手とファンの交流が多く見られた。特に多くの見せ場を作った橋本英也、引退を迎えた小野寺玲、柴田雅之(ヴィクトワール広島)が、バイクを降りるのを惜しむようにファンと話し込んでいたのが印象的だった。

レース後、選手コメント

ヨナス・ヴィンゲゴー(優勝)

戻って来れて、勝てて嬉しい。勝負は最後と思いタイミングをはかっていた。落車はウエットな路面にホイールが足を取られたせい。日本のファンの声援が力になった。ありがとうと言いたい。この後は1週間ほど日本に滞在して休暇を楽しむ予定だ。

ジョナタン・ミラン(2位、ポイント賞、新人賞)

このレースでシーズンを終えられてハッピーだ。ペースが速くて、逃げを追うのが大変でタフだった。チームメイトが助けてくれて追い縋ったが、届かなかった。
日本の観客はとてもラブリー。来れて本当に楽しかった。

カーデン・グローブス(3位)

©️Yuzuru SUNADA

テクニカルなコースでいいレースだった。逃げがヴィンゲゴーだったので強すぎたね。雨だったのにファンもたくさん来てくれて本当に嬉しかった。

ヴァランタン・パレパントル(山岳賞)

もうちょっと暖かいと良かったんだけどもね(苦笑)。けっこうフルガスになってしまった。(クライマーなので)登り下りがあったのでよかった。日本の観客にはパッションを感じたよ。

プリモシュ・ログリッチ(敢闘賞)

雨もあったし、なかなかキツいレースだった。最後は惜しかったけれども、エネルギーなくなってしまった。
日本のファンにはいつも驚かされる。サポートしてくれて、いつもありがとう。

新城幸也(9位、日本人最高位)

最初は雨だったがだんだん路面も乾いてきて、気温も上がって状況はよくなった。最後の2周、逃げた4人もメイン集団のトレックの牽きもすごく速かった。今日は最初から逃げがあって、次々ブリッジがかかって目まぐるしい展開で、楽しんでもらえるようなレースになったのではないか。

橋本英也(13位)

ハイレベルなレースで貴重な経験になった。中盤のペースが緩んだタイミングで飛び出していこうと考えていた。来シーズンも競輪、トラック、ロードレースと3足のわらじで頑張っていきたい。

2025 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム RESULT

1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク/チームヴィスマ・リースアバイク) 1:26:49
2位 ジョナタン・ミラン(イタリア/リドル・トレック) +0:08
3位 カーデン・グローブス(オーストラリア/アルペシン・ドゥクーニンク)
4位 ダヴィデ・ステッラ(イタリア/UAEチーム・エミレーツXRG)
5位 ロメット・パユール(エストニア/レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ドリアン・ゴドン(フランス/デカトロンAG2Rラモンディアール)
7位 アレクサンダー・ハイェク(オーストリア/レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
8位 ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー/ウノエックス・モビリティ)
9位 新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
10位 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
11位 エドワルト・トゥーンス(ベルギー/リドル・トレック) +0:12
12位 中村圭祐(ヴィクトワール広島)
13位 橋本英也(キナンレーシングチーム) +0:17
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