【2023さいたまクリテリウム】ポガチャル鮮烈な勝利、ポイントランキング王者の実力見せつける
2023年11月5日、JRさいたま新都心駅周辺の特設コースで「J:COM presents 2023ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が開催された。長いシーズン最後の公式イベントとあり、例年にもましてツール本番を彩った千両役者たちが躍動。勝者は今年のUCIポイントランキングで3連覇を飾ったタデイ・ポガチャルが能力を見せつけ初優勝を飾った。
豪華すぎるメンバーが繰り広げた、今シーズン最後の「劇場」
さいたまスーパーアリーナの中を駆ける趣向を凝らした、1周3.5kmの公道コースを17周する59.kmのレースに参陣したのは、昨年のツール覇者タデイ・ポガチャル、今年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者セップ・クス、ツールでポイント賞を7年連続獲得した生けるレジェンド ペテル・サガン、引退を撤回し来年のツールでのさらなるステージ勝利記録を狙っているマーク・カヴェンディッシュ、現役選手中もっともグランツールを制しているクリス・フルームなど、想像以上に豪華な隊列となった。2、6、10、14周目のスタート/フィニッシュラインではスプリントポイント、4、8、12、16周目のアンダーパスの終わりの登りでは山岳ポイントが設定されている。
開始直後は前目に位置していたフルームが逃げるものの、スプリントポイント、山岳ポイントを狙ってカヴェンディッシュ、ツール山岳賞のジュリオ・チッコーネ(イタリア/リドル・トレック)が交互に先頭を奪う流れで周回が進んでいった。
残り3周目あたりで再び飛び出したのはフルーム。ついていったのはフルームと同じツール優勝経験者で、大怪我後の復活が待たれるエガン・ベルナル(コロンビア/イネオス・グレナディアーズ)。ツール覇者同士の豪華な鍔迫り合いが見られたすぐ後に、飛び出したのはこの男だった。
16周目のスプリントポイントはサガンが奪取しそのまま独走体制を築こうとするも、これを許すまいとブリッジをかけてきたのがセップ・クスとポガチャルだった。後半になってどんどんとペースが上がってきたレースはここでさらにギアが上がり、3人が先頭集団として後続との差を安全圏まで広げていく。
終盤になっての「鬼牽き」でスタミナが尽きたサガンは、最終周の段階で2人に遅れをとってしまう。残った2人のうち、スプリントについてはポガチャルの方がレースでの経験と実績は上。アンダーパスを登り切ったあとの最後のストロークは、ポガチャルが余裕を持って押し切った。
RESULTS
順位 | ゼッケン | 選手名/ 出身 / 所属チーム | Time |
---|---|---|---|
1 | 11 | タデイ・ポガチャルTadej POGAČARUAEチームエミレーツ | 01’23’03" |
2 | 1 | セップ・クスSepp KUSSオランダ/ユンボ・ヴィスマ | +01″ |
3 | 32 | ペーター・サガンPeter SAGANツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ | +16″ |
4 | 34 | マーク・カヴェンディッシュMark CAVENDISHツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ | +20″ |
5 | 54 | アクセル・ジングレAxel ZINGLEフランス/コフィディス | +20″ |
6 | 44 | マティアス・ヴァチェクMathias VACEKアメリカ/リドル・トレック | +20″ |
7 | 112 | ゲオルギオス・バグラスGeorgios BOUGLAS日本/マトリックスパワータグ | +20″ |
8 | 83 | 岡 篤志Atsushi OKA日本/JCL TEAM UKYO | +20″ |
9 | 123 | 佐藤 健Ken SATO日本/愛三工業レーシングチーム | +20″ |
10 | 43 | アスビャアン・ヘレモースAsbjørn HELLEMOSEアメリカ/リドル・トレック | +20″ |
各選手談話
タデイ・ポガチャル(クリテリウム優勝/最優秀新人賞)
(レースについて)
さいたまで勝つことができてうれしい。最後の方で仕掛けようと思っていて、1回だけのつもりだったからそれで決まってよかった。アリーナも通るし上りもあってとても楽しいコースだった。
(来年のグランツールを含むレースプランについて)
今のところまだ予定はあまり埋まっていない(決まっていない)が、多くのレースに出たい。もちろんツール優先だが、チームのみんなと話し合って決めていきたい。
マーク・カヴェンディッシュ(クリテリウム4位/ポイント賞)
(今大会について)
今回も日本の皆さんがすごく良くしてくれてうれしく思う。とにかく楽しかった。さいたまでは、皆さんに歓迎されているのがわかる。(今年一度引退を発表し撤回したが)さいたまに来るのが今回で最後ということはないと思う。
(来季について)
引退を撤回するかたちになったが、現時点で言えることは来年もスプリンターとして勝利を目指していきたいということ。
新城幸也(チームタイムトライアル優勝)
(チームタイムトライアル優勝について)
先週のシンガポールでは3位だったので、チームで「さいたまでは絶対勝つ」ということで事前にプランを立て綿密に臨んだのでとても嬉しい。チームとして来日したのも久しぶりなので、その意味でもよかった。(オリンピックについて)
自分も、選手としてのキャリアがカウントダウンに入っていることは感じている。自分から終わらせることはないが、そういった状況の中で第二の故郷と言えるフランス・パリ五輪には、最後のチャンスかもしれないのでやはり出たい。
ロード引退のサガンを称えるセレモニー開催
今シーズンの公式イベントがこの大会で終了するということで、来季からMTBに専念することを表明しているサガン選手にとってはこの日が「ロード引退の日」となった。ツールで幾度となくレースをともにしたフルームが花束を渡し、これまでの功績を称えた。以下、サガンのコメント。
ここで泣いてほしいなんて言わないよね(笑)。これでロードレースのキャリアは区切りをつけるけれど全然レースに出ないということはなく、準備のために小さな大会には出ると思う。今後は夢であったMTBで頑張るので、またそちら(の大会)で会いましょう。
補足:サガンはもともとジュニア時代はクロスカントリーで力を発揮しており、プロ転向後はロードレースを中心としてきたが、2016年のリオオリンピックははMTB代表で出場している。21年の東京オリンピックも同様にMTBでの出場を目指していたが、直前のツールで落車、怪我のため断念した経緯がある。