Appleが次期iOSの地図アプリに「自転車」ルート検索追加も、日本導入未定のワケ
Appleが次期iOSで、純正マップアプリに自転車のルート検索追加することを発表した。事実上走行できない階段を回避するよう検索するほか、ルート中の勾配の情報も表示するという。ロサンゼルス、上海などから導入すると発表されたが、日本での導入予定は発表されなかった。Googleマップも含め日本ではサイクリスト向けの機能が軒並み未導入となっている理由を検証した。
次期「iOS14」では純正のマップアプリがナビゲーションも行う(日本以外)
Appleが現地時間22日から開催した開発者向けカンファレンス「WWDC」の冒頭で発表した様々な新機能のなかに、サイクリスト向けの新しい機能追加も含まれた。次期「iOS14」の純正地図アプリのルート検索に、従来からある「車」「電車」「徒歩」などと同様に「自転車」のオプションを追加する。しかも自転車でのルート表示の際には、事実上通れない階段を避けるほか、勾配の情報も表示する。同社のシニアディレクターであるStacey Lysik(ステイシー・リシック)氏によると、これまで同社には自転車オプションの追加要望が最も多く寄せられていたという。
このオプションは、初期はニューヨーク市、サンフランシスコのベイエリア、そして中国の上海と北京などで表示され、数カ月以内にさらに多くの都市が追加されると発表したが、日本については未定だ。日本のサイクリストにとっては悲しいニュースでもあった。
Googleマップの自転車オプションも日本未定のまま
実はこれとまったく同じ事態が、Appleの純正マップアプリよりはるかに市場シェアを占めているGoogleマップでも起きている。同アプリでは2年近く前から、地図のレイヤー表示に「自転車」が追加されているが、当初から日本では使えない状態が続いている。ルート検索においても同じで、PCで検索するとアイコンとしては表示されるものの、選択しても表示されない。いったいこれはなぜなのか。
この理由はAppleとGoogleが日本に対して意地悪ということではなく、単に「自転車レーン」の情報が各自治体や国から使いやすいデータとして提供されておらず、情報を収集するのにかなりの手間がかかるため後回しになっているという事情があるようだ。また、日本においては自転車通行に関する管轄は各自治体のため、情報収拾できたとしても、その内容やフォーマットがバラバラで、アプリに搭載できるものになるかどうかもまったく不明としか言わざるを得ない。
自転車においては、衛星データ等で道路の存在を取得したとしても、そのすべてが通行可能と判断できるわけではない。その道路が自転車が通行できない高速道路か専用道か、通行できるとしても自転車通行帯があるかないかで、ルートとして表示するべきかが変わってきてしまう。その情報確認なしに機能を提供すると、場合によっては交通違反のルートをガイダンスすることになる。日本においてはその種別が複雑すぎ、画像データとその解析だけでルート検索機能を提供するわけにはいかないのである。
それでも日本で様々な会社がルートを探索できるアプリ/サービスを提供しているが、よくよく見るとすべて「ユーザが自らルートを作成する」「自身が走ったルートをログする」のどちらかであることに気づくはずだ。2大プラットフォーマーが、自らの責任でルート検索機能を提供するからには安全面での担保が欠かせないため、他の会社のようなかたちで機能を提供するわけにはいかない、という事情も当然あるだろう。
つまり日本の地図アプリで自転車のルート検索が実現するためには、日本の道路行政のあり方も含めた、自転車に対する姿勢の変化が求められるという、大きすぎる話になってしまうのである。新型コロナへの対応の一環として自転車販売数が増加するなど、日本でも再び自転車に対する追い風が吹いている。その流れがこうした方面の支援になることも期待したいところだ。