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「世界初の3Dプリンタ製自転車」は本当か 旭硝子が出資したArevoとは

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Arevoが製作したカーボンフレームのバイク

2018年5月18日、米シリコンバレーに本拠を置くArevoが、旭硝子などから1250万ドルのシリーズB投資を獲得したと発表した。同時に同社の革新的な3Dプリント技術で生産したカーボン製自転車を公表した。

革新性のポイントは「3Dプリント」+「カーボン」

日本企業が出資したとあって各媒体でも大きく報じられ、一部では「世界初の3Dプリンター製自転車」とも言われているが、これは事実ではない。3Dプリンター(一部)で生産する自転車フレームは、2016年に日本のIoTハードウェアメーカー、Cerevoが先に発表しているからだ。

ORBITECは、フレームの一部、シートチューブ、ダウンチューブなどを接続しボトムブラケットを内蔵する「ジョイント」が3Dプリンタで製造されている。材料はチタニウム。スポーツバイクに求められる軽量と剛性の両立という要件を満たすものとして、カーボンに次いで評価されている材料だ。またIoTハードウェアメーカーらしく、フレームに各種センサーを内蔵。走行時の様々なデータをリアルタイムに共有・分析が可能な自転車だ。

ではArevoに関する「世界初」の要素はまったくないのかというとそのようなことはない。今回は、3Dプリントでカーボン素材を扱うことができるようになったところに革新性がある。

プレスリリースより:Arevoの持つ3Dプリント技術で「プリント」されるカーボンフレーム

現在のカーボン製商品は、炭素繊維に樹脂を染み込ませ金型に入れ、焼成して焼き固めるというプロセスで製造される。金型も焼成するオーブンも必要なので大規模な生産設備が欠かせない。カーボン製品が例外なく非常に高価なのはそれが要因だ。

Arevoはこの製造プロセスを劇的に変えたとしている。画像にあるように、既製の6軸ロボットアームに独自デザインのヘッドを取り付け、このヘッドから炭素繊維を「プリント」する。3D空間のどこにでも置くことができるだけでなく、同時に熱可塑性材料をヘッドから出すことで、金型もオーブンも必要なくなるというわけだ。つまり製造コストを劇的に下げることにつながる。実際Arevoでは、人手がほとんどかからないので300ドルで製造できるとしており、いくつかの自転車メーカーからも引き合いが来ていると明かしている。

多数の企業がこぞって出資する理由

Arevoは、このカーボンバイクと同時に、旭硝子や住友商事の米国子会社などからシリーズBとして計1250万ドルを調達完了したと発表した。これまでもシリーズAとしてCIAの後ろ盾があるベンチャーキャピタルなどから支援も得ている。軽く強靭な製品を生産可能にするカーボン生産技術の革新は、軍用や民生の機体、自動車といった多くのモビリティの生産工程に大きな変革をもたらす可能性が高く、そのため各企業、ベンチャーキャピタルの投資意欲も強い。Arevoももともとそういった分野への進出を考えており、今回の自転車は、あくまで自社の技術力をアピールするためのものであり、数ある生産可能なプロダクトの一部を見せたに過ぎない。今回の発表と同時にCEOについた、前Amazonのサプライチェーン担当副社長だったジム・ミラー氏は「我々はどんな大きなものでも生産可能だ。たとえ航空機の機体でも、主翼でもね」と語っている。