『周山街道、自転車で危険』地元新聞の報道に賛否両論
京都のサイクリスト、バイク愛好者には有名な国道162号線(通称周山街道)に関する地元新聞の記事がネット上で波紋を呼んでいる。並走するなどマナーの悪いサイクリストに対する批判や、車は自転車を追い越すのが前提であるかのような記事の書きぶりにも疑問が出ている。
「約3時間で自転車25台」が問題?
2019年11月23日付で国道162号線について報道したのは、地元紙の京都新聞。読者から危険だという報告があり、記者が実際に数時間取材したという。京都市内と福井県小浜市を結ぶ国道162号は、別名周山街道・鯖街道とも呼ばれ、紅葉の名所・高雄やその北の山塊、若狭湾に面した小浜市を道一本でつなぐ、市民にも親しまれる道だ。自転車も走れる一般道であり、京都のサイクリストなら一度は走ったことがあるのではないだろうか。
記事は、記者がまず北区中川まで自動車を走らせた体験から始まる。「自転車を追い越すには道幅が狭くて危険に感じた箇所がいくつもあった」という。道幅が狭いのはサイクリストのせいではない。それによって危険だ、と断定するのは自動車側にあまりに寄りすぎた表現だ。また取材の一環として道路状況を見ていた中で「後方の自動車は追い越すことができず、前方からは対向車がやってくる。一歩間違えれば事故になりかねない状況」とも表現しているが、これも自転車が邪魔だから追い抜くのが当たり前で、それができないから危険という、こちらも非常に一方的な観点からの表現と言わざるを得ない。そもそも対向車線にはみ出て追い抜くのは道路交通法違反である(国道162号線の大部分はセンターラインがはみ出し禁止のイエローライン)。にも関わらず、「自転車をよけるために自動車が黄色いセンターラインを越える場面も見た。約3時間で自転車25台が通過した」と、まるで自転車が走ること自体を否定するかのような表現が続く。この台数は特に多いとは思えない(約7分ごとに自転車1台)ので、これは公正な報道とはとても言えないだろう。
「そもそもなぜ追い越す前提なのか」
一方で、マナーの悪いサイクリストが目撃されたことも確かなようだ。「5台が縦一列に並んで規則正しく走る集団があった一方、自転車2台が並走して車道をふさぎ、後方の自動車からクラクションを鳴らされるグループ」も見られたという。自転車は道路交通法では軽車両に属し、自転車道がない場合は道路の路側帯、左側を走ることとなっており、横に並んで走ったり、中央側(センターライン側)を走ることは法律違反となる。また自治体の条例レベルの規制だが、ほぼすべての都道府県において、ヘッドホンで耳を塞いだり、スマートフォンを見て前を見ず走行することも認められていない。
こうした記事がソーシャルブックマークサービスで取り上げられると、すぐに話題となって多くのユーザーからコメントが寄せられた。「自動車の快適な走行が優先、自転車は自動車の迷惑にならないように走りましょう、という考え方自体がまずおかしい」「そもそもなぜ追い越す前提なのか」「道交法守ってるのに、たまにクラクション鳴らす人がいるけど、あれは煽り運転だよな」と記事の内容に疑問が多く寄せられる一方で、「自動車に抜かされることを想定して速度を落とすか積極的に譲ってくれないと危ない」「車しか通らない前提で作られているから狭いし怖い。自転車人口の増加で法律が合わなくなっているのでは」というドライバー側と思われる意見も寄せられ、賛否両論が渦巻く状態となっている。
いうまでもなく、高速道路や専用道路でない一般道では、自動車以外の車両、歩行者も通行できる。通行する車両、歩行者すべてが道路交通法を遵守する必要があり、弱者である歩行者以外は誰かが誰かを優先する義務などなく、平等な立場で安全な通行に貢献しなければならない。京都は歴史ある、個性的な自転車店も多く、関西や日本のサイクリングシーンを牽引する地域でもある。そのような地域の地元紙が掲載したこの記事は、今後も大きな波紋を起こしそうだ。