日本サイクルスポーツ振興会、新型コロナウイルス感染対策における屋外サイクリングについて提言
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、外出自粛が要請される一方で、体力や免疫力維持のための運動も奨励されている。ソーシャルディスタンスを保ちながらのランニング等は問題ないとされているが、屋外でのサイクリングについては世界的にも医学的エビデンスに基づくガイドラインといったものはなく、サイクリストもどう行動すればいいのか迷っているのではないだろうか。そんな中、バンクリーグなどを主催する有力な競技振興団体のひとつが提言をまとめ、公表した。
日本サイクルスポーツ振興会が8つの提言
提言を公表したのは、日本サイクルスポーツ振興会という団体。昨年より数回開催されている、全国の競輪場を会場とした日本初のトラックレース対抗戦「バンクリーグ」などを主催する団体だ。理事長は公営競技に欠かせない写真判定を可能にする「スリットカメラ」を開発した日本写真判定社長で、JCF常務理事でもある渡辺俊太郎氏が務め、評議員には現在、日本のマウンテンバイク競技の第一人者である山本幸平氏らが名を連ねている。
同振興会は、日光を浴びること、新鮮な空気を吸いながらサイクリングすることは健康維持に必要であり、自転車は他人との接触を避けつつ移動できる手段だとメリットを挙げる一方、行動如何によっては感染拡大を招いてしまうとし、感染防止と健康維持の観点から以下の8つの提言を発表した。なおこの提言は2020年4月10日時点の内容であり、状況に応じ随時更新するという。
▼屋外サイクリングについての提言
1:人通りの少ない場所を選びましょう。
2:可能な限り1人で行いましょう。ただ、人通りのない場所での 1 人のサイクリングにはリスクもあります。また、子供などサポートを必要とする場合もあります。提言の趣旨をご理解いただき、ご判断下さい。
3:走行時は他のライダーと十分な間隔を開けましょう。十分な距離については様々なご意見があるようです。提言の趣旨をご理解いただき、ご判断下さい。
4:医療機関に負担をかけないよう、怪我のリスクが高い走行方法は避けましょう。
5:追い込み過ぎて免疫力をさげないようにしましょう。
6 :食べ物や飲み物は携行し、可能な限り店舗などには立ち寄らないようにしましょう。
7 :マスクを携行し、コンビニ等の店舗に寄る場合は必ず着用しましょう。
8 :帰宅後はすぐにシャワーを浴びて、ウェアはすぐに洗濯しましょう。
他団体やプロ選手なども同様の提言
感染が世界中に広がり、多くの国が外出制限や都市封鎖(ロックダウン)を実施するなか「サイクリストの行動はどうあるべきか」という議論は当然世界でも行われており、いくつかの提言、ガイドラインも出されている。今回出された提言はその内容をほぼ踏まえたもので、具体的にはイングランドの「サイクリングUK」で出されているQ&Aや、オランダ自転車競技連盟が発表した指針を元にしたとみられる。より参考になる細かな留意点を挙げるとすれば、海外の団体が出した指針では、高速でサイクリングする場合少なくとも20メートルは離しておく必要があることや、2日以上回復する必要のあるインターバルワークアウトやブロックワークアウトなどの激しいワークアウト、および3時間以上のワークアウトは避けるべきだと指摘されている。
なお前者は「サイクリングにおけるソーシャルディスタンス」について言及しているものだが、根拠となる論文が公開されている。オランダのアイントホーフェン工科大学などがまとめた調査研究で、サイクリングに関して直接調べたものではないものの、歩行(時速4km/h程度)で前後に5m、ランニング(時速14.4km/h)で前後に10m
程度の距離が必要ということが示されている。
論文では、この調査結果をもとに、サイクリングについてはそれ以上離れるか、あるいは1.5m程度離れて横並びで行うことが示唆されている。日本で横並びで走るのは法律違反なので、国内では縦列で20m以上離れるというのは、現実的な指針になる内容だろう。
だが、海外ではいずれの指針・提言でも、第一選択は「家にいること」だとされている。それを大前提として踏まえた上で、さらに屋内トレーニングの環境がない場合、これまで取り上げてきた内容を参考にして行動を決断することが大切ではないだろうか。