「童夢」が自社設備に「競技用自転車空力計測システム」設置、一般利用も開始
「童夢」といえば、フォーミュラーカーなどのレーシングコンストラクターとしてあまりにも有名だが、今回、自社の大型風洞設備『風流舎』に「競技用自転車空力計測システム」を設置した。一般も利用可能だ。以下、プレスリリースより紹介。
フレームやウェアなどの開発にも利用可能
今回私ども童夢は、競技用自転車の計測システムを開発し、当社が所有する風洞実験施設”風流舎”を使い、自転車本体のみならず、選手が乗車状態のままでも各種空力解析を行う環境を新たに設けました。昨年4月より試験を重ね、この度、競技用自転車ユーザーの方に幅広くお使いいただける準備が整いましたことを、お知らせいたします。
『風流舎』とは、これまで、F1グランプリカーやル・マン24時間用スポーツカーなど、トップクラスのレーシングカー開発に用いられてきた、2000年に当社が建設した当時世界最大級の50%スケールモデル用ムービングベルトを備えたゲッチン式風洞実験施設です。
風洞実験施設やコンピュータによる空力解析は、今や航空宇宙系やレーシングカーの開発だけではなく、建築をはじめとする社会インフラ施設はもちろん、空気が関わる様々な分野で活用されています。また、近年ではスキージャンプや滑降、ボブスレーなどのオリンピック競技の世界でも、選手の姿勢改善を含むトレーニングや用具類の改良のため空力解析の重要性が認識されるようになりました。
中でも自転車競技では、自転車本体、選手の姿勢、ヘルメットを始めとする着用品などの空力特性が競技に大きく影響を及ぼすことが知られており、欧米では風洞実験施設を用いた計測及びトレーニングは常識となっています。日本でも自転車選手が同様の計測を行うようになりましたが、国内には自転車競技のトレー二ングに使える風洞実験施設が不足しており、国立科学スポーツセンターには直接選手が風洞内に入って空力特性を測定できる風洞実験設備が設置されてはいるものの、より精密測定可能な施設が求められていたことが、検討するきっかけでした。
風流舎は、元々レーシングカーの50%スケールモデルを用いた空力解析のために建設された風洞ですが、それだけに風洞内に流れる空気については安定した温度と均質な風速分布を追求する必要があり、風管長99mに及ぶ水平回流式ゲッチンゲン式の模型風洞としては国内最大級規模を誇っています。そして、童夢は、1987年より自社で風洞設備を保有し、創業以来蓄積してきた風洞実験ノウハウと、風洞設備の自社開発並びに運用経験を有しています。それらを他分野にも活かしていければと考え開発に踏み切り、1年間試験を重ねて出来上がったのが今回のシステムです。
今回風流舎のために開発した自転車空力計測用システムは、ムービングベルト上に設置する構造で、従来の計測用ストラットを含む設備と交換式となっており、境界層の影響を考慮して台上に自転車を固定、六分力天秤で台上の自転車にかかる荷重、モーメントを計測できます。また、前後輪は電動ローラーにより、回転時、停止時いずれの計測も別途可能となっており、さらに手動で車両の進行方向を変更することもできます。計測中、選手は乗車状態のまま床面に設置したモニターでデータをリアルタイムに確認できるので、自身で乗車姿勢を変化させてデータの変動を確かめることも可能です。もちろん計測データは記録されており、計測後により精密な解析を行うことができます。
情報公開に先立ち、童夢では元プロ・ロードレース選手で、現在は一般の方向けに競技用自転車のコーチをしている辻 善光氏を招いて計測実証テストを行い、新しい実験設備に高い評価をいただきました。
辻 善光氏のコメント
「これは我々が待ち望んでいた設備です。自転車メーカーが開発する製品は年々進歩していますが、それが本当にどんな性能を発揮するのかを確かめることができました。今回計測して、これまで思っていたのと全く異なる結果が得られて、“なるほど”と納得することが何度もありました。空力的に有利な姿勢、体力的に有利な姿勢などの分析も細かく確かめられるので大変役に立ちました。ドリンクボトルの有無については都市伝説的な言い伝えがあるのですが、これについても検証でき興味深い結果が得られました。いろいろなことをもっと試してみたなって、ワクワクしました」
精密な計測が可能な風流舎の自転車計測システムは、選手のみならず、フレーム、ホイール、ヘルメット、ウェアなどの開発にも活用いただけるものと自負しております。今後、プロユースだけでなく、アマチュア・ホビー・サイクリスト、そして車いすロードレーサーなどにもご利用いただけるよう運用方法を検討する予定でいます。詳しくは、お気軽にお問い合わせください。