第104回ジロ・デ・イタリア第3ステージが10日、北イタリア・ピエモンテ州のビエッラ〜カナーレ間190kmで行われ、序盤から逃げグループに加わったタコ・ファンデルホールン(オランダ/アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)がグループ内での争いを勝ち抜き、迫り来るメイン集団を振り切って見事なグランツール初勝利を挙げた。日本から唯一参加の新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)はこの日もアシストの任務を遂行し、メイン集団内の61位でゴールしている。
最後の「登りスプリントポイント」を最初に通過するのは誰だ
この日の第3ステージは、昨日の終着点ノバラ市街と、初日タイムトライアルの会場となったトリノのちょうど中程にあるビエッラが出発点。ここから昨日のコースを横切るように南のカナーレへ向かう190kmのコースで、途中に3級、4級、4級の山岳ポイントが設定されている。昨日と違い、短いながらもいずれも勾配のきつい急峻な登坂ルートだ。そしてさらに「隠れた山岳ポイント」として、残り15km弱の地点にこちらも急峻な丘陵を越えるスプリントポイントが設定されている。その後は下り基調だが、ピュアスプリンターにはかなり厳しいプロファイルとなっており、スプリントも登りもこなせる「パンチャー」タイプのライダー向きのコースだ。
逃げ集団8人、逃げ切り狙い粘れるか
この日は比較的多めの人数の逃げグループ8人が形成され、メイン集団との差を一時は約6分開き、数少ない逃げ切りの可能性を求めて疾走する。後半に通過する山岳ポイントは前述の通り急峻な丘ばかりで、確率は少ないものの多少は逃げ切れる望みが低くないからだ。このグループには下位カテゴリのプロチームを中心に、アンドリー・ポノマル(ウクライナ/アンドローニジョカトーリ・シデルメク)など若手がひしめく布陣となった。
後方のメイン集団では、このステージ向けの脚質を持つエース、ペテル・サガン(スロバキア)を要するボーラ・ハンスグローエが終始先頭に位置しコントロール。後半の山岳ポイントの始まりまでは逃げ集団との差を約3分にとどめ、山岳ポイントが続く区間に入るとさらにペースアップ。ライバルとなるスプリンターたちをふるい落としにかかる。厳しい登りとペースアップの中で、ボーラ・ハンスグローエの思惑通り、この区間でディラン・フルーネウェーヘン(オランダ/ユンボ・ヴィスマ)、カレブ・ユアン(オーストラリア/ロット・スーダル)、前日のステージ優勝者ティム・メルリール(ベルギー/アルペシン・フェニックス)らが次々と脱落していった。
ボーラ・ハンスグローエ力尽く 逃げ集団内のサバイバルを勝ち抜いたのは
最後の山岳ポイントである4級山岳マネーラを通過した時点で、逃げ集団とメイン集団との差は1分30秒にまで縮まる。この区間で逃げ集団も5人に絞られサバイバルが始まっており、定石通りにメイン集団がこのまま彼らを飲み込むと思われた。しかし、ここでこれまで集団を牽引してきたボーラ・ハンスグローエもアシスト陣が力尽き、集団のペースが鈍ってしまう。これを好機と捉えたタコ・ファンデルホールンが、最後まで残っていたシモン・ペロー(スイス/アンドローニジョカトリ・シデルメク)を振り切り、残り9km時点でアタック。残った力を振り絞って果敢に独走を開始する。
この独走を阻止するため、メイン集団ではUAEチームエミレーツが先頭に変わり激しく追いすがる。一時は1分まで再び広げられた差を残り1km時点で15秒まで詰め、さらに追い詰めるが、ファンデルホールンの独走力がさらに上回った。最後は後ろの集団との位置を振り返り確認しながら、喜びを噛み締めつつフィニッシュラインを通過。今年ワールドチームに昇格したものの未勝利だったチームに、グランツールの大舞台で初勝利をもたらした。
見事な逃げ切り勝利を挙げたファンデルホールンは、この勝利がキャリア5勝目。2018年のビンクバンク・ツアーのステージ勝利するなどその年の活躍で注目され、2019年からユンボ・ヴィズマで2年間キャリアを過ごしたが結果を出せず契約終了。一時期はコンチネンタルチームに所属しプロ復帰を目指した苦労人だ。レース後のインタビューでは「いまのチームでは自由に走ることが許されている。ジロではアグレッシブに行こうと思っていた」と感慨深げに語った。
なおこの日の新城幸也はエースを護るというチームでの仕事をまっとうし、ファンデルホールンから4秒差でゴールしたメイン集団内でフィニッシュ。61位で無事完走している。
ジロ・デ・イタリア2021第3ステージ リザルト
1位 タコ・ファンデルホールン(オランダ/アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) 4:21:29
2位 ダヴィデ・チモライ(イタリア/イスラエル・スタートアップネイション) 0:00:04
3位 ペテル・サガン(スロバキア/ボーラ・ハンスグローエ)ST
4位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア/コフィディス)ST
5位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド/イスラエル・スタートアップネイション)ST
6位 ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー/アルペシン・フェニックス) ST
7位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア/UAEチームエミレーツ) ST
8位 アルベルト・ベッティオル(イタリア/EFエデュケーション・NIPPO) ST
9位 ステファノ・オルダーニ(イタリア/ロット・スーダル) ST
10位 ジャコポ・モスカ(イタリア/トレック・セガフレード) ST
61位 新城幸也(日本/バーレーン・ヴィクトリアス) ST