来年に延期された東京オリンピックの自転車ロードレース競技の代表選手選考をめぐり、昨年に続き有力選手が異議を申し立てる事態となった。公式発表されていないが、申し立てたのは宇都宮ブリッツェンに所属する増田成幸選手とみられる。
コロナ禍対応で選考期間78日延長も、期間中の国内対象大会が軒並み中止
コロナ禍の影響で昨日からようやく国内のロードレースシーズンが始まったが、期せずして国内ロードレース界に激震が走った。スポーツ分野の紛争調停組織である「公益財団法人日本スポーツ仲裁機構」がWebサイト上に、7月3日付で日本自転車競技連盟(JCF)を相手とする仲裁申し立てがあったことを公表していたが、関係者の話から、申立人が宇都宮ブリッツェンに所属する増田成幸選手であることが分かった。
当メディアでの既報通り、国内統括団体であるJCFは、コロナ禍でレース開催が中断されていた2020年5月25日、上部組織である国際統括団体・国際自転車競技連合(UCI)がシーズン中断を宣言した日から、当初の選考期間だった2020年3月15日までの日数である78日を、UCIの新シーズン開始日の8月1日から適用して消化させると発表した。つまり、事実上2020年8月1日から10月17日まで残りの選考期間を再設定すると同時に、この選考期間は今シーズンのUCIのワールドツアー終了日でいかなる場合も終了させるとして、来シーズンまでの繰り越しはしないと決定していた。
発表当初、国内の選考対象レースである「ツアー・オブ・ジャパン」「全日本選手権ロードレース」は開催予定だったが、その後もコロナ禍が収束せずいずれも中止が決定された。つまりオリンピックを目指す国内チーム所属の有力選手にとって、主要な選考対象レースがほぼなくなった格好だ※。その一方で8月1日からは、海外チームに所属する日本選手は海外の選考対象レースへの出場機会が78日間確保されるという、結果的にバランスを欠いた事態となってしまった。現在国内チーム「宇都宮ブリッツェン」に所属し、選考ポイントで有利となる海外レースに出場することが難しい増田選手にとって、現在選考ポイントランキング2位で出場枠には入っているものの不利な立場にたたされており、このことが申立の契機となったとみられる。
ロードレース種目の代表選手選考方法を巡っては、現在、女子選手で日本で唯一海外チームで活躍している與那嶺恵理選手が昨年、男女の選考基準が違うことなどを理由に変更を求めて仲裁を申し立てたが却下されている。他の種目がすでに代表内定選手を発表し、順調に好成績を上げるための準備に入っているのとは対照的に、ロードレースは男女とも、有力選手が競技団体に異議を申し立てるという異例の事態を迎えている。
※UCIが発表した2020シーズンのレースカレンダーでは、2020年10月4日に「おおいたアーバンクラシック」、11月8日に「ツール・ド・おきなわ」が掲載されているが、いずれも現時点で開催の正式決定はされていない(後者についてはもともと選考期間に入っていない)。