コロナ禍でリモートワーク、ソーシャルディスタンスが推奨されたこともあり、電車に乗らずに自転車通勤する人が世界的に増えたのはご存知の通りだが、このたび直木賞作家の熊谷達也氏が、そんな状況でロードバイクに目覚めたアラフィフ男性を描いた小説『明日へのペダル』を上梓した。
運動不足でメタボ、コロナ禍でスポーツクラブにも入れず
見出したのは‥サイクリング
直木賞作家の熊谷達也氏が新作書き下ろしで描いたのは、50代を迎え運動不足からくるメタボが進み医師から薬の服用を勧められた、どこにでもいる男性。スポーツクラブ入会を決めたところでコロナ禍に見舞われ、スポーツクラブでもクラスターが発生しているのを見聞きし躊躇していたところ、自転車に出逢う‥というあらましだ。
実は熊谷氏自身もスポーツバイクに魅せられレースに参加、入賞するほどの「ガチのサイクリスト」。コロナ禍で仕事や生活が息苦しくなり運動もままならない、という状況は誰にも起きた共感できる状況設定で、そこからロードバイクに魅せられていく主人公の様子を、自身の体験も存分に織り込んだ説得力のある描写で表現しており、氏独特の分かりやすくテンポのよい文体もあいまってぐいぐい読ませてくれる。「ロードバイク愛を込めて描く感動の物語」、日本人作家が描く自転車小説はかなりレアなだけに、ツール・ド・フランスを観戦しながら読書するのもいいかもしれない。