UCIワールドツアー再開! ストラーデ・ビアンケはファンアールトが完全復活勝利

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©️RCS Sports

コロナ禍で2月中旬以降、長らく中断していた自転車ロードレース世界最高峰ツアーシリーズ「UCIワールドツアー」が8月1日に再開した。皮切りとなった「ストラーデ・ビアンケ」の男女エリートが1日、イタリアで開催され、男子はワウト・ファンアールト(ベルギー/ユンボ・ヴィスマ)が怪我からの完全復活を印象付ける独走勝利、女子は世界王者のアネミエク・ファンフルーテン(オランダ/ミッチェルトン・スコット)が大会2連覇を果たした。

コロナ禍でのロードレース開催の範となるか 様々な感染予防の工夫

新型コロナウイルスの猛威は世界中でいまだ収まっていないが、ヨーロッパでは概ね2ヵ月におよぶロックダウン(都市封鎖)のあと、徐々に社会活動が再開されている。スポーツイベントについても各国の方針の濃淡はあるが、ソーシャルディスタンスと関係者の健康管理、観客数の制限または無観客を条件に開催を認めている。UCI(国際自転車競技連盟)も開催地政府の方針に従い、8月1日からシーズンを再開。その再開初日を飾るレースは、イタリア・トスカーナ州で例年3月上旬に開催される伝統あるワンデイレース「ストラーデ・ビアンケ」となった。

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レース開催にあたり、運営ガイドラインとして示されたのは、参加各チームに対する選手・スタッフのPCR検査・検温を含めた体調管理と報告、公式行事におけるマスク着用、取材等におけるソーシャルディスタンス。特に選手に対しては、スタート直前までマスクの着用を求めるなど万全を期すものとなった。
しかしこうした中でも、男子エリートで出走予定だったシルヴァン・ディリエ(スイス/AG2Rラモンディアール)が陽性反応を示したため未出走となった。観戦判明時の状況によってはチームごと未出走となる規定だったが、同選手の感染判明がチームに合流する前であったため、チームの他選手はそのまま参加できた。また女子に関しては、新型コロナとは関係ないが、開催前日にトレックのチーム運営者が盗難に遭いバイク5台を盗まれる事件が発生した。選手たちにはスペアバイクが提供され出走には問題なかったが、トラブルの相次ぐツアー再開となった。

男子:大怪我からの完全復活! ファンアールトが酷暑の中強さを見せる

トスカーナ地方の険しい丘陵地帯の未舗装路を走る、非常に厳しいサバイバルレースで知られる「ストラーデ・ビアンケ」。男子は、過酷なアップダウンが続くシエナの丘を走り、中心部カンポ広場のゴールを目指す184km。標高500m以下を走り続けるにも関わらず、獲得標高は3000mを超え、コース全体の約34%にのぼる合計11カ所・計63kmの未舗装セクターがライダーたちの脚を容赦なく削る。しかもフィニッシュ直前には、最大勾配16%・平均勾配12.4%の激坂が設定されており、クラシックレースとしても最高レベルの難易度となっている。さらに、今年は例年と違う8月開催とあって、酷暑のサバイバルレースの要素も入ってくる。実際、開催当日の気温は最高37℃だった。

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天候は晴れで路面は完全に乾き、まさに「ストラーデ・ビアンケ(白い道)」と表現される状況。ライダーたちは自らが巻き起こす白い砂埃と酷暑のなか、間断なく続くアップダウンに苦しみ続けた。暑さに苦しむ選手が続出し、パンクや脱水症状に見舞われ、ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア/トレック・セガフレード)や前年王者のジュリアン・アラフィリップ(フランス/ドゥクーニンク・クイックステップ)、マチュー・ファンデルプール(オランダ/アルペシン・フェニックス)らが相次いで脱落していった。

ヤコブ・フルサン(デンマーク/アスタナプロチーム)が残り50kmあまりで訪れる未舗装路の最長区間でアタックすると、サバイバルはさらに強まり、フルサンは一度独走に持ち込むことに成功する。取り残されたメイン集団からはさらに脱落者が続出。生き残ったのはマクシミリアン・シャフマン(ドイツ/ボーラ・ハンスグローエ)、グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー/CCCチーム)、アルベルト・ベッティオール(イタリア/EFプロサイクリング)、ワウト・ファンアールト(ベルギー/ユンボ・ヴィスマ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア/UAE・チームエミレーツ)の5人のみに。この5人はここから踏ん張ってペースを上げ、先行するフルサンに追いついて、結果先頭集団6人が形成された。

残り30km地点で6人と後方との差は1分10秒。微妙な差だったが、これ以降急速に縮まることはなく、事実上この6人での優勝争いが確定した。牽制や小規模なアタックが繰り返された中、決定的な攻撃が放たれたのは残り12km地点。最後の未舗装路区間、最大勾配18%の激坂に入ったところでファンアールトがアタック。圧倒的なスピードで抜け出し、独走状態に持ち込むことに成功した。

ファンアールトはそのまま後続に30秒あまりの差をつけ、念願の戴冠。2019年のツール・ド・フランス第13ステージ(個人タイムトライアル)で落車し重傷を負っていたが、怪我から1年あまりでの完全復活を印象付ける強さを誇示した。

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男子最終成績

1 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 4時間58分56秒
2 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAE・チームエミレーツ) +30秒
3 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +32秒

女子:世界王者ファンフルーテンが堂々の大会2連覇

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女子は男子とほぼ同様のコースで、距離が短縮された136kmで争った。男子より前のスタートだが、その時間はなんと正午前。真夏の真昼にスタートする過酷なレースとなった。

レースは早くからサバイバルを見据えて落ち着いた展開となったが、そこから残り40km地点でマビ・ガルシア(スペイン/アレ・BTCリュブリャナ)が飛び出し独走に成功。最大でメイン集団から4分差をつけて勝利を確定させたかのように見えたが、離れたメイン集団から満を待して抜け出したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ/ミッチェルトン・スコット)が、単独で凄まじい追走を開始する。今季4戦4勝の世界王者はほぼ単独で差を詰め、残り6.8km地点で先頭のガルシアを捉える。

2人でフィニッシュ直前の激坂区間に突入すると、ファンフルーテンはすぐに圧倒的な登坂力でガルシアを置き去りにし、力の差を見せつけた。最後は22秒差をつけ、堂々の大会2連覇を飾った。なおレースには日本の第一人者與那嶺恵理選手も参加していたが、残念ながらリタイアとなっている。

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女子最終成績

1 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 4時間3分54秒
2 マビ・ガルシア(スペイン、アレ・BTC・リュブリャナ) +22秒
3 リア・トーマス(アメリカ、エキップ・ポールカ) +1分53秒
DNF 與那嶺恵理(日本、アレ・BTC・リュブリャナ)

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