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【ツール・ド・フランス2019】第10ステージ、新星ファンアールト競り勝つ

2019年7月15日、ツール・ド・フランスは第1週最後の日を迎えた。中央山塊からピレネーへ向かう、ここ数日の中でも緩やかなレイアウトのコースは、戦前の穏やかなレースの予想を覆して個人総合争いでも激しい鍔迫り合いが起きる展開となった。

中央山塊最終日、スプリンターへの福音なるか

中央山塊を通過する最終日は、その中でももっとも穏やかな起伏。4級、3級山岳が計3つあるが、全体としては細かなアップダウンを繰り返しながら下っていくレイアウトだ。純粋にスプリンター向けとは言えないが、逃げ集団とのタイム差を適切にコントロールすれば、最終的にはスプリント勝負に持ち込むことができるだろう。また翌日は休息日とあって、翌週のピレネーでの戦いを控え個人総合争いに動きはないのではと予想された。

 

逃げ集団は6人、メイン集団との差はコントロールされる

この日の逃げ集団は当初5人で、のちに1人加わり6人となった。トニー・ギャロパン(フランス、AG2R・ラ・モンディアル)やナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス・ソリュシオンクレディ)が入りメイン集団との差を築こうとするが、スプリンターたちの勝利をお膳立てしたいメイン集団内の各チームは、ここ数日と違いきっちりとコントロール。3分以内の差で進んでいく。

突然始まったメイン集団内の攻撃

最後の山岳ポイントを越えたのち、逃げ集団との秒差を管理していたプロトンがにわかにざわめきだす。マイヨ・ジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)やチームイネオスが集団前方でペースアップを繰り返し、ライバルたちを置いていこうと試み始めたのだ。実はこの区間、強烈な横風が吹き始めており、予測していた一部のチームは前もってここでの攻撃をプランに入れていたもよう。

この動きを予測していなかった有力選手は後手に回ってしまい、あえなく千切れてしまう。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・FDJ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)らが遅れを取り、このままトップ集団に復帰することはなかった。奇襲に屈するかたちとなった。

攻撃を仕掛けた側のアラフィリップや、個人総合大本命のゲラント・トーマス(イギリス)、エガン・ベルナル(コロンビア)を擁するチームイネオスらは前に残り、その勢いのまま逃げ集団を吸収。スプリンター達の勝利を目指しトレインを形成し合うチームとともに、フィニッシュを目指す。

スプリンターの勝利と思われたが、最後は

最後の直線、残り200m付近からすべてのリードアウトが終わり、よいポジションを得たスプリンターたちがラストスプリントを開始。真ん中で完璧なアシストを得ていたマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームサンウェブ)が最初は前に出るが、すぐ横から出てきたワウト・ファン・アールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、その側でカウンターを仕掛けようとするエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が伸び、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・ソウダル)との争いに。最後はバイクの投げ合いで、わずかにファン・アールトが先着した。

シクロクロスの圧倒的王者、ロードでも順調に才能の片鱗を見せる

ファン・アールトは2016年から2018年までシクロクロス世界選手権を3連覇し、鳴り物入りでロードへ転向した期待の若手だ。転向わずか1年目にして、先月のクリテリウム・デュ・ドーフィネでは第3ステージの個人タイムトライアルと第4ステージで連勝。特に第3ステージは、2位以下に40秒以上の差をつけた圧倒的な勝利を遂げ、ライダーとしての能力を見せつけた。このツールでも結果を出すことを期待されていたが、最初の休息日前のこのステージで早くも勝利をあげることとなった。

各賞ジャージは変わらなかったが、個人総合争いには変化があった。アラフィリップ以下が変動し、チームイネオスの2人がこの日の攻撃が奏功して2位、3位に浮上。ピレネーの山岳ステージを前にして、早くもライバルに対し優位な立場に立った。

ツール・ド・フランスは、明日が最初の休息日。明後日の7月17日から第2週が開幕する。

 

サイクルジャパン:

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