2019年7月19日、ツール・ド・フランス第13ステージは個人タイムトライアル。大方の予想ではマイヨ・ジョーヌ交代、大本命のゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が個人総合トップに躍り出るとされていたが、誰もが予想しなかった結果となった。
距離27km、1回限りの個人タイムトライアル
ピレネーの尾根をのぞむ平坦地、ポーで行われるこの日のタイムトライアル。今年のツールでは唯一個人タイムトライアルとなる。緩勾配はあるものの基本的には平坦。クライマー脚質ではない個人総合上位陣は、ここで少しでもライバルとの差を縮めるか、リードを築きたいところだ。
デ・ヘントが基準タイムを作る
この日は、出走順中頃でスタートしたトーマス・デ・ヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)のタイム35分37秒が、なかなか破られない基準タイムとして後続の目標となった。
相前後して、第10ステージを制したワウト・ファン・アールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が、コーナーを攻め過ぎてクラッシュ。右脚上部を負傷し、リタイヤとなる残念なアクシデントが起きた。
誰も予想し得なかった幕切れ
結局最後の出走順、個人総合上位10位以上の選手らがスタートするまでデ・ヘントのタイムがトップを堅持し続けることに。その後もトップを争うと思われたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーショナルファースト)やリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)のタイムが伸びず。
個人総合2位のゲラント・トーマスがようやくトップタイムを塗り替え、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)からマイヨ・ジューヌを奪取すると思われた。しかしこの後方では、驚くべき走りが展開されていた。
なんと、アラフィリップがトーマスをも凌ぐ驚異的なタイムで最終コーナーを迎え、そのまま15秒近くもトーマスのタイムを上回ってゴール。タイムを詰められるどころか広げる、堂々たる勝利に観客は大興奮。歓喜の声がフィニッシュポイントを包み込んだ。
アラフィリップはマイヨ・ジョーヌを守っただけでなく、この日の敢闘賞も獲得。第3ステージに続くツール2勝に花を添え、この日の驚くぺきパフォーマンスで個人総合争いに本格的に名乗りをあげたとも言える。
しかし、明日からはピレネー、アルプスの山岳ステージが待ち構える。クライマーほどの適性を持ち合わせていないアラフィリップが、どこまでチームのアシストを得てマイヨ・ジョーヌを守れるか。おそらく当初の目論見が大きく外れてしまったトーマス率いるチームイネオスは総力戦を仕掛けてくるはずで、残りのステージはまさに火花散るような戦いになるだろう。