2019年7月20日、ツール・ド・フランスはいよいよ第14ステージ、恒例のトゥールマレー峠をフィニッシュとする超級山岳での個人総合トップ争いを迎えた。
ツールの象徴、トゥールマレーを今年制するのは誰か
この日のハイライトは、なんといってもトゥールマレー峠。ツール山岳ステージの象徴の一つであるこの峠は、1910年の初登場以来、幾重にも伝説的なストーリーが紡がれた誰もが知る名所だ。今年この山頂フィニッシュをトップで通過し、ツールを長年支えた運営責任者で「ツール・ド・フランスの父」の名を冠する「ジャック・ゴデ賞」の栄誉に浴するのは誰か。前日までフランス人であるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が戦前の予想に反しマイヨ・ジョーヌを維持しているだけに、この日の戦いは例年より激しいものになるのではと予測された。
ニバリが飛び出す
スタート後、単独で飛び出したのはヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)。ここまで期待に応えられず幾度かの山岳で遅れ、事実上個人総合争いから脱落しているなか、一矢報わんと序盤の山岳ポイントをトップで通過する。
その後、彼を追ってきた16人の集団と合流し逃げ集団を形成。これからの山岳で少しでも有利な状況に持ち込もうとする。この集団には途中のスプリントポイントを狙うペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、山岳賞ジャージを維持するティム・ウェレンス(ベルギー・ロット・ソウダル)などが含まれていた。
いよいよ、トゥールマレーへ。登坂序盤は
途中の1級山岳「ソウロール峠」を越えた下り入った頃から、メイン集団をモビスターが牽引、ペースアップし始める。逃げ集団からこぼれ落ちていたサガンらを吸収しながら、逃げ集団への追走、そしてメイン集団内での揺さぶりを仕掛けていく。
残り11km弱の地点で、最後まで逃げ残りを狙い飛び出していたエリ・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック)を吸収。ここから本格的なサバイバルが始まった。
サバイバル始まる、フランス人ライダー奮闘
ここまでの途上ですでにアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)らが集団から脱落していたが、メイン集団が逃げていた選手全員を吸収した直後に、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が脱落してしまう。
その後、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)、チームのエースであるティボー・ピノを勝たせたいダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマ・FDJ)が飛び出しをはかったり、集団を牽引するなど積極的な動きで振い落としにかかる。
この動きが功を奏し、各チームのエースも耐えきれず脱落していく。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)、そしてなんと個人総合2位のゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が最終盤の残り1kmで脱落してしまう。マイヨジョーヌのアラフィリップはメイン集団に生き残っており、この日もジャージを堅持することが確定した。
山頂を制したのは・・・
残り500mを切った最終盤、満を持してアタックしたのはティボー・ピノ(グルパマ・FDJ)。長く厳しい勾配で疲弊していたライバルたちはついていけない。鮮やかなペースアップで一瞬に6秒もの差を後続につけたピノが、今年のトゥールマレーの覇者となった。一方そのすぐ後ろできっちりと2位を確保し、ボーナスポイントを獲得したのはアラフィリップ。クライマーではない彼が、ここで後続に差を詰められることなく逆に差を広げることができたのは、今後に大きなアドバンテージを与えただろう。
結果としてフランス人ライダーが個人総合トップとこの日のステージ優勝を独占、訪問していたマクロン大統領の顔もほころぶ結果となった。