2019年7月21日、ツール・ド・フランスはピレネー最終日となる第15ステージが開催された。後半の1級山岳でのサバイバルを勝ち抜いたのはサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。後方の個人総合争いは激しくせめぎ合い、秒差が縮まった。
ピレネー山脈最終日、1級山岳3連弾が選手の勇気を試す
トゥールマレーでの厳しい戦いを乗り越えた選手たちに待ち構える、ピレネー最終日の「刺客」は、休むことなく立ち現れる1級山岳の3連弾。超級山岳と比べれば厳しいことはないが、2番目の山岳にはボーナスポイントが設定され、個人総合を争う選手たちに一寸の間隙も与えない。山岳での争いは、この日を終えれば最後のアルプス3連戦までお預けであり、また翌日は休息日とあって、上位浮上を狙う選手が思い切った動きをとることも十分考えられる。
50km近くも逃げが決まらず超ハイペースに
この日はスタートから、誰もが絶対に逃げを認めない激しい潰し合いが間断なく続くという、非常に厳しい序盤となった。途中個人総合で下位であるヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ロマン・バルデ(フランス、AG2R・ラ・モンディアル)が飛び出しを狙うが、すぐに吸収されてしまう。結局最初の2級山岳への登り口、実にスタートから50km近くまで逃げ争いが続くという近年にもない異例の展開となり、その結果、超ハイペースの煽りを受け山岳賞ジャージのティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が集団から遅れてしまった。
ようやく決まった逃げ集団31人、しかし駆け引きが続く
長く争った末、形成された逃げ集団は31人と大規模なものとなった。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、バウケ・モレンマ(オランダ、トレック・セガフレード)、.ロマン・クロイツィゲル(チェコ、チームディメンジョンデータ)、バルデ、ニバリ、サイモン・イェーツら個人総合上位を争う面々が多数入り、ステージ優勝の主導権はこのグループが握った。しかし、すぐに集団内で駆け引きが強まり、グループは2つに分かれ、さらにアタックが始まる。
最初の1級山岳への登りに入ったところで、サイモン・イェーツが単独で先行。ペースアップにニバリ、モレンマらが遅れ始める。こうした動きの中で徐々に先頭集団の数が減り、山頂を迎える頃には、15人に減っていた。
3連弾を生き残ったのは
2つめの1級山岳、ボーナスポイントが設定されている「ミュール・ド・ペギュエール」に向かう道程でさらに人数が絞り込まれていく。その山頂直前で飛び出したのは、シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCC)とサイモン・イェーツ。ふたりは協力し合い、リードを築こうとさらにペースをあげていく。
最後の1級山岳、ステージ勝利と個人総合争いともに激しく
先頭の2人は後続にある程度の秒差を築くことができ、ステージ勝利に大きく前進。最後の1級山岳「プラットダルビ」での決戦に。登坂途中、勾配がきつくなるところで満を持してサイモン・イェーツがアタック。鮮やかなペースアップでゲシュケを置き去りにしていく。
その直後、後方のメイン集団では、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が決意のアタック。昨日ステージ勝利をあげたものの、個人総合では下位に沈んだままとあって、一気にここで勝負に出る。このアタックは効果を上げ、ピノより上位のゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が付いて行けずメイン集団から脱落、追いすがったエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)も後ろに置いていくことに成功した。
先頭は、このままサイモン・イェーツが駆け抜けて勝利。第12ステージに続いて2勝目を挙げた。2着は終盤、幾度にもわたる見事なアタックで総合上位を置き去りにしたピノが入り、個人総合順位もトップのアラフィリップから1分50秒差の4位に躍進した。なおそのアラフィリップはステージ11位に終わり、ライバルのトーマス、ベルナルらに遅れをとり、差を27秒縮められたものの、マイヨジョーヌは堅持している。
最後のピレネーでの過酷なステージを終え、翌日は休息日。ツール・ド・フランスは23日からいよいよ最終週、最後のアルプス決戦へと駒を進めていく。