2019年7月25日、ツール・ド・フランスはいよいよアルプスの山岳決戦初日となる第17ステージを迎えた。おなじみの超級山岳が相次いで現れる今大会のクイーンステージでの戦いは、
ツール常連「イゾアール」「ガリビエ」にどう立ち向かうか
第18ステージは1級山岳、超級山岳が2つ組み込まれた今大会のクイーンステージだ。200kmの長さに加え、ツールではおなじみの名物峠、超級「ガリビエ峠」、「イゾアール峠」が後半にそびえる。現在個人総合首位、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が1分30秒弱の差でトップに立っているが、本来はこれまでクラシックで活躍してきただけに、この日からの山岳3連戦でどこまで他チームのエースたちの攻撃をかわしていけるかがポイントとなる。
イゾアール峠登坂前にようやく逃げが決まる
この日もなかなか逃げが決まらず、スプリントポイントへの争いと合わせたかたちで、スタートから45km付近でようやく決まった。ロマン・バルデ(フランス、AG2R・ラ・モンディアル)、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)など山岳が得意な有力選手も多く含んだ34人もの集団となり、メイン集団はこの後のレースのマネジメントに苦労しそうな勢力図となった。
超級山岳までの体制が決まったことで、その前の1級「ヴァル峠」は静かな展開となり、メイン集団は逃げ集団に対し8分弱の差で山頂を通過する。
イゾアール峠の戦いへ
イゾアール峠の登りがはじまったところで、逃げ集団の中からフレフ・ファン・アヴェルマート(ベルギー、CCC)とジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)の2人が飛び出し、一旦は差を広げていく。
しかしその後ろの元逃げ集団、追走グループではアダム・イェーツ、ロマン・バルデが前に立ちグループのペースを引き上げ追い込みを始める。2人ともこれまで活躍を見せられず、総合成績上位も見込めなくなっているため、ここクイーンステージでの勝利を積極的に狙っていると思われた。
メイン集団も登坂に入ると、モビスターが集団の前でペースアップ、先頭との差を縮めながらふるい落としを図る。予想より早めの仕掛けにみるみるメイン集団の数が目減りし、20人程度になってしまった。
それぞれの位置で早くも激しいサバイバルが始まる中、山頂通過時点では先に飛び出した中でベルナールが先頭。追走集団からキンタナらが抜け出しトップを追う。メイン集団はトップからの差を5分程度に縮めた。
いよいよガリビエ峠へ
ガリビエ峠への登り口を通過する頃、前方集団は離合集散したものの、再び逃げ集団としてまとまった。この中にはレース通じてステージ勝利を狙い動くアダム・イェーツ、バルデ、キンタナが入っている。メイン集団は差を縮めんと、いよいよチームイネオスが集団をコントロールし始める。
登りが始まると、逃げ集団も人数が減り、バルデ、キンタナ、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)、アレクセイ・ルチェンコ(カザフスタン、アスタナ)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)の5人に。この後、ルチェンコの試すようなアタックをきっかけにさらにせめぎ合いが強まる。
その中で、満を持してキンタナがアタック。素晴らしい加速に他の選手は反応できず、一気に飛び出しに成功した。
後方のメイン集団はそれまで動きがなかったが、山頂近くになって個人総合5位、2分2秒差のエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がアタック。順位アップを果たそうとペースを上げる。
山頂を越え、下り、そして勝利へ
順調に一人旅を続けるキンタナはついにガリビエ峠を先頭で通過。その後、追走から抜け出していたバルデは、超級山岳の山岳賞ポイントを荒稼ぎしてティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)を逆転する見込みが立つ。
キンタナはその後も下りを危なげなく走りきり、ようやくの今大会初優勝。個人総合順位も前日までの12位から3分54秒差の7位へとジャンプアップさせ、総合優勝へ一縷の望みを残した。バルデは2位に入り、山岳賞ジャージの奪取に成功した。
その他の総合優勝争いでは、山頂前でアタックしたベルナルがメイン集団より30秒先着してゴール。チームメイトのゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)を交わし、個人総合2位に浮上した。
その中で出色だったのはアラフィリップ。積極的なレースではなかったが途中の総合上位陣の揺さぶり、アタックになんとか耐えてメイン集団内でゴールし、マイヨジョーヌを堅守した。新たに2位となったベルナルとの差は1分30秒で、前日とほぼタイムを失っておらず、戦前の予想を裏切って粘りを見せたかたちだ。