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【ツール・ド・フランス2019】第19ステージ、ついに個人総合で首位交代 悪天候でレース途中打ち切り

2019年7月26日、ツール・ド・フランスはアルプスの山岳決戦2日目となった。序盤からまさかの展開が相次ぎ、レース自体も途中で打ち切りとなるなど波乱の展開となった。

ただひたすら登る90km、2,000mの「登山」

第19ステージのポイントはなんといっても超級イズラン峠までの登り。今大会最高標高となる2,770mの「頂」に向け、スタートから約90kmにわたって、3級、2級、3級山岳をこなしながら、ただひたすら登る。スタート地点の標高は702mなので都合約2,000mを登っていくこととなり、これはもう自転車で「登山」していると言っても過言ではない。クライマー以外にとっては苦行以外なにものでもないだろう。さらに頂上付近は森林限界も越え、酸素濃度も薄い。非常に忍苦を強いるステージであり、前日までマイヨジョーヌを堅持しているジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)にとっても、耐える1日となる。

序盤、フランス期待の選手に悲劇が

序盤、幾人かの逃げのトライを吸収しながら、比較的静かに進んでいたメイン集団に衝撃が走る。フランス期待の地元選手、前日まで首位から1分50秒差の個人総合5位につけていたティボー・ピノ(フランス、グルパマ・FDJ)がなんの前触れもなくスピードダウン、明らかになんらかの体調変化をきたした様子で、集団からどんどん遅れていく。途中メディカルカー、チームカーでの処置を受けたが改善する様子はなく、途中ピノは走りながら人目も憚らず号泣。最後はチームメイトに慰められながら自転車を降り、チームカーに収容されリタイヤとなった。

レース中このリタイヤの原因については情報が錯綜したが、レース後チームの発表で明らかになった。それによると、前々日の第17ステージにおいて、落車回避の動きをとった際に左大腿部をハンドルバーに強打してしまい、肉離れを起こしていたというのだ。昨日はなんとか他のライバルに遅れをとることなく完走できたが、その後痛みが悪化、歩くことも困難な状態になったという。わずかな可能性にかけ、この日のレース直前まで何度も治療を行なったがよくならず、そのままスタートしていたということだった。

チームの発表後、メディアに対し答えたピノは「第2週が終わった時点で個人総合優勝できる手応えを感じていた。キャリア最大の失望だ。」と落胆を隠さなかった。

ついに個人総合争いに変動が

スタートから70km手前のスプリントポイント通過後、20人以上からなる逃げ集団が形成されたが、このすぐ後から本格的な登りに入るため、集団の形を維持できるかは微妙な情勢だった。

その直後、後ろのメイン集団から、マイヨジョーヌのアラフィリップに対しライバルが動く。まずはゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が飛び出し、その後エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がさらにアタック。アラフィリップはこれについていけず、長い登りの中でついに決定的に差を詰められ始める。

ベルナルはその後、先頭集団に追いつきトップをうかがい、イズラン峠山頂ではトップで通過する。1分30秒弱あったアラフィリップとの差をついにひっくり返し、この時点で事実上の個人総合トップに立った。

アラフィリップは後方でチームメイトのサポートもなくなり、単独で山頂を通過。先行するベルナルとは約2分、トーマスとは1分の差がこの時点でついており、フィニッシュまでにはさらに差がつくと予想された。

しかしここでまさかの天候悪化、レース打ち切り

しかしここでまたも予期せぬ事態が起きる。コースはイズラン峠通過後下るルートだったが、その途中の地域で局地的な降雪、雹などで一部の道路が土砂崩れで埋まっていることが発覚。運営は急遽その後のレース中止を決定した。選手たちは山頂後、全力で下っている途中で運営カーやチームカーから言い渡されるかたちとなり、納得がいかないと不満を見せる者もいたが、この状況を見れば決定は適切なものと言わざるを得ない。

レースが途中で打ち切りとなったことで第19ステージの区間成績はなしとなったが、イズラン峠山頂までの選手個々のタイムは有効となり、個人総合成績はカウントされた。結果、ベルナルがマイヨジョーヌを獲得。第3ステージからマイヨジョーヌを19日間守り抜き、地元フランス人の期待を一身に集めたアラフィリップはついにその座から陥落した。

明日は事実上、最後の総合優勝争いとなるアルプス最終日を迎える。設定されたのは超級山岳の山頂フィニッシュ。個人総合成績5位までがトップと2分以内という大激戦のなか、まだまだ大勢は決したとは言い難い。最後の瞬間までマイヨジョーヌ争いは白熱しそうだ。

サイクルジャパン:

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