2019年7月27日、ツール・ド・フランスはアルプス最終日を迎えた。個人総合争いはこの日が事実上の最終日。悪天候の影響で急遽コース距離が短縮され、スタートから激しい展開となるなか、ついに総合優勝が決まった。
悪天候でコース距離短縮
昨日のステージを途中打ち切りに導いたアルプスでの悪天候が、この日もツールに襲いかかった。本来の距離は130kmで山岳を3つ越えていくプロファイルだったが、ひとつめの山岳ポイント「ロズラン峠」に悪天候で土砂崩れが発生。やむなくレース運営は最後の超級山岳「ヴァル・トランス」への登りだけを残し、レース距離を59.kmにカットした。つまりこの日は最後の登りだけを考えればよいことになり、個人総合争いは事実上今日が最後であることも考え合わせると、かなり激しい争いが繰り広げられる可能性が高くなった。
逃げ切り狙いの大集団形成
距離が半分以下に短縮されたとあって、この日はスタートから逃げ集団形成への動きが激しく展開され、ほどなく28人の大集団が形成される。ベルナルが位置するメイン集団はこれを見送り、長い登りの中での追い越し、または他のライバルへの牽制の姿勢を見せた。
残り12km、動いたのは
残り12kmの地点で敢然とアタックしたのはヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)。個人総合上位が見込めなくなってからのここ数日は、毎ステージ逃げに乗ろうとするなど積極的にステージ優勝へのトライを続けてきた。この日も逃げに乗ってから、自らハイペースを作り他選手をふるい落とし続け、満を持してのアタック。先頭集団で誰も付いていける選手はおらず、なんなく独走態勢を築いていく。
メイン集団では残り6km付近から、個人総合下位のアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らが何度か飛び出し揺さぶりをかけるが、マイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア)を擁するチームイネオスがその度に牽制をかけ吸収する展開が続いた。
ニバリ、ついにステージ優勝 最後に花添える
ニバリはそのまま余裕を見せながら登り続け、山頂ゴール最後のフィニッシュラインを通過し今大会初勝利。当初狙っていた総合優勝は叶わなかったが、山岳ステージの最後に本来の力を見せつけ、存在感を見せた。
メイン集団でのマイヨジョーヌ、総合上位争いは、チームイネオスが鉄壁の防御を見せ、ライバルたちのアタックを全て吸収。メイン集団内で守られ続けたベルナルが、ディフェンディングチャンピオン、チームメイトでもあるゲラント・トーマス(イギリス・チームイネオス)に祝福されながらゴールラインを通過。この瞬間に、事実上史上初のコロンビア選手のツール初制覇が決まった。
ベルナルは23歳以下の選手たちで争う総合上位部門でも1位となり、マイヨブランも獲得。近年のツールにはなかったかたちの「2冠」をやってのける超新星となった。昨日、初めてマイヨジョーヌを着用した後のインタビューでも感極まった様子を見せた彼は、この日の最後の会見でも感無量といった様子。「まだ信じられないし、勝てた理由もわからない。コロンビアでのトレーニングはいつも父が一緒だった。僕の努力を知るのは父ただ1人」と育ててくれた父への感謝の気持ちを口にした。
ここ数年、世界のサイクリングシーンを席巻していたコロンビアの選手たち。各トップチームに有力選手たちが多く在籍し、先輩格であるナイロ・キンタナ(モビスター)はジロとブエルタを制しているが、ツールのコロンビア人制覇は史上初めて。才能溢れる若手によるいきなりのツール優勝に、母国コロンビアは沸き立っているだろう。