【ツール・ド・フランス2019】最終第21ステージ、ベルナルがコロンビア人初の個人総合優勝

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2019年7月28日、ツール・ド・フランスはついに最終日。パリ中心部を走る事実上のお披露目ステージは、夕闇迫るシャンゼリゼを駆け抜け、ステージ勝利を狙うスプリンターたちの最後の競演の場だ。そして同時に、前日までのステージで総合優勝を決めた栄誉ある王者の、凱旋の場となる。

華麗なる、シャンゼリゼへの凱旋ロード

最終ステージは1975年以来の長年の恒例、パリ郊外から市街地に入り、シャンゼリゼ通りを含めた周回コース。毎年このステージだけは、夕闇の薄明かりに映える凱旋門などパリの中心街がもっとも美しくなる時間帯にゴールするために、夕方前からのスタートとなる。

またフィナーレにふさわしく、前半と後半でまったく違う顔を見せるステージでもある。市街地に入るまでの前半は慣例として総合優勝争いは行わず、パリ市民たちに各賞ジャージの選手たちをお披露目するパレード走行となる。市街地入り後は、平坦なクリテリウムレースとして選手たちの様相は一変し、「シャンゼリゼの王座」を奪うべく最後のステージ優勝を狙うスプリンターたちが激しく、華麗に競い合う。

前半の「パレード走行」を楽しむ選手たち

今年の最終ステージスタート地はランブイエ。ヴェルサイユ宮殿などがあるパリ西方の郊外で、パリ市民がサイクリングを楽しむ名所でもある。この日まで個人総合トップ、マイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア)の「凱旋」を祝おうと、所属チームのチームイネオスはこの日だけのスペシャルジャージをチームメイトが着用、さらにジャージ色のイエローに合わせたベルナル専用の新車を用意した。スタート地付近では、史上初のコロンビア人チャンピオンを一目見ようと、在仏コロンビア人が詰め掛ける。

そしてもちろん、前日まで激しく争っていたライバルたちもチャンピオンを祝福。数々の祝福をおけながら、チャンピオンを戴く隊列が凱旋走行をスタートする。

長年の慣例通り、市街地まではゆっくりとした速度でのパレード走行。最高の舞台で競い合った「仲間」として、チームの枠を越えあちこちで歓談の輪が広がる。

2019年ツール、最後の舞台へ

やがて隊列は、陽が傾いたパリ市街地へ。黄金の陽の光は、歴戦の末たどり着いた選手たちを讃えるスポットライトのようだ。その光の中で、隊列は最後のステージ優勝を争ういつもの姿に立ち戻っていく。

周回コース入り直後、トーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)とオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が飛び出す。その後ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)とヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)が続いて飛び出し、先の2人に合流。4人の逃げ集団が成立する。

この逃げ集団に対し、メイン集団は秒差を30秒程度でコントロール。周回6周のうち、後半に向けて差を縮め始める。飲み込まれまいとする逃げ集団では、残り2周に差し掛かるところでトラトニクとスクーリーがさらにアタック。トラトニクはともに抜け出したスクーリーをも引き離し、わずかの間独走で先頭となったが、直後、ペースをあげ背後に迫ってきたメイン集団に吸収された。走行速度60km越えとなった集団はラスト1周を迎え、いよいよスプリント勝負のための位置取り合戦に入る。

残り200mで早駆けし、先頭に立ったのはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)。マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)が続いて前に。これまでステージ未勝利のスプリンター達がここぞとばかり積極的に出るが、残り100mを過ぎてカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・ソウダル)とディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がそのすぐ後ろから一気に伸びて逆転。左右両サイドに分かれて前がクリアなポジションを探し出し、先着を争った両者だが、勢いの差でユアンが勝ち切った。

そのすぐ後ろでは、前日に引き続きベルナルとゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が手を取り合いながら共にゴール。正式にベルナルが個人総合優勝を決めた。

個人総合、各賞ジャージの顔ぶれ

今大会初優勝を決めたベルナルは若干22歳。プロ生活はまだ4年目だ。最初のチーム、アンドローニジョカットリ・シデルメク(当時、イタリア)で若手登竜門とされるツール・ド・ラブニールを制し将来を嘱望され、2018年より今のチーム(当時チームスカイ、現チームイネオス)に在籍。今期は3月開催のパリ~ニース、6月開催のツール・ド・スイスで個人総合優勝を遂げ、才能開花も間近だと思われていたが、いきなりのツール優勝となった。また、マイヨジョーヌが制定された1920年以降では最年少、さらに史上初のコロンビア人によるツール制覇と、さまざまな歴史を一気に塗り替えた。

表彰直後、コメントを求められたベルナルは、個人総合2位となったトーマスはじめチームに感謝の意を示し「僕はいま世界で一番幸せな男だと思う」と喜びを表現。英語、イタリア語、スペイン語、フランス語で通訳を介さず自分でコメントし、コロンビアから活躍を夢見てイタリアに渡り、欧州各国をレースで回るタフな日々も乗り越えてきた器用さの一片も見せた。

今年の個人総合成績2位は、昨年初優勝のゲラント・トーマスとなった。アルプスの最終決戦までは2位を保ち連覇に向け視界良好だったが、山岳でのベルナルの強さにはかなわず後塵を拝した。「ケガなどで調子が上がらずつらい日々だったが、エガンが勝ってくれたことでホッとした」と海外メディアの取材に心境を語っている。

3位はステージ優勝などはなかったが、各ステージ粘り強くライバルについていったステーフェン・クラウスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が入った。2016年ジロ・デ・イタリア個人総合4位、昨年のツールは5位とステージレーサーとして着実に実績を積んできていたが、ここで自身グランツール初の表彰台獲得となった。

マイヨジョーヌ以外の各賞ジャージはこの顔ぶれとなった。ポイント賞のマイヨヴェールは、大会新記録となる7度目のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。山岳賞のマイヨアポアは、ロマン・バルデ(フランス、AG2R・ラ・モンディアル)。23歳以下の選手のみで争われる総合上位最上位者に贈られる新人賞、マイヨブランはベルナルが獲得した。ベルナルは個人総合と新人賞の2冠という快挙も達成したことになる。

また、各ステージチーム別で上位3位のみを対象とした総合タイムで争われるチーム総合は、モビスターが獲得。全ステージ通じてもっとも印象に残った選手に贈られる総合敢闘賞には、期間通じて大半の間マイヨジョーヌを堅持し、今大会もっとも地元フランスの観客を沸かせたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が選ばれた。

誰もが認めるサイクリングシーン最大のイベント、ツール・ド・フランスはこれにて閉幕。シーズンも後半に入り、次の山場は3週間後のブエルタ・ア・エスパーニャ、その後秋のクラシックレースへと移っていく。

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