いよいよ今夜開幕する第109回ツール・ド・フランス。今年の「グラン・デパール」は、世界でもっとも自転車フレンドリーだと言われるデンマークの首都・コペンハーゲンを走る個人タイムトライアルとなる。実は編集部では以前、所用もかねコペンハーゲンを訪れていたので、この機会にコペンハーゲン、デンマークの自転車愛好のスゴさについてレポートしたい。
チボリ公園は東京の上野公園!?
その前にひとつ、一昨日、チームプレゼンテーションが行われたチボリ公園について。この公園はコペンハーゲン観光でまず外せない、東京で言うところの上野公園といったポジションに似ているような名所だ。公園なのだが遊園施設が入っており、その意味でも上野公園のようなたたずまいと言えるかもしれない。市内でももっとも大きな、群衆が入れる「ハコ」ともいえ、プレゼンテーションの開催場所としては最適だった。
コペンハーゲンは海辺に近く、運河も造成された平坦で美しい街並みが有名だ。第1ステージのコース近くには案内板も置かれ、開催を街をあげて楽しみにしていることが窺える。ちなみにデンマークをはじめ欧州では先週から夏休みのところも多く、その意味でもバケーションの始まりとして大いに賑わいを見せることだろう。
そんなコペンハーゲン、デンマークの自転車LOVEぶりはハンぱなかった
編集部がコペンハーゲンに滞在していたのはそれなりに前の6年前なのだが、できるだけ最新事情を織り込みながら紹介したいと思う。まずは市内いたるところに設置されているシェアサイクル。今でこそ日本の都市部でも当たり前になってきたが、コペンハーゲンのシェアサイクルはかなりよく考えられているものだった。
「BYCYKLEN」がサイコーに使いやすくカッコいい
コペンハーゲン市内には、至るところにこの白いシェアサイクル(電動アシスト!)のポートが設置され、その場で乗れて他のポートで乗り捨てができる。もちろん有料で決済のため登録が必要なのだが、事前にしていなくてもその場で登録が可能だった。
なぜかというと備え付けの液晶ディスプレイがあり、それを見ながらその場で会員登録(クレジットカード登録)が可能なのだ。少し見づらくて恐縮だが、何も知らずにディスプレイを触ると、英語ではあるがわかりやすいガイダンスが出てきて、1−2分で登録できてしまう。料金は、当時は1時間25クローネ、今は値上がりして30クローネだそうだが、それでも日本のシェアサイクルより安い。
そして観光客にとって嬉しいのが、ルート検索。ソフトウェアキーボードで行きたいところを検索すると、地図で今いる場所からのナビまでしてくれる。スマホでやればいいじゃん、となるかもしれないが、外国旅行者向けに名所をリスト表示してくれる機能もあって、非常にありがたい仕様だ。
そんなわけで、この白いシェアサイクルは街中で非常によく見かけた。使いやすくオシャレで安いとなれば、使わない手はないだろう。
自転車が街中で「交通機関」として当たり前に組み込まれている
この写真はコペンハーゲン市街中心部から少し離れた場所の道路だが、この標識の意味が分かるだろうか?自転車レーンが設定されているのはもちろんのこと、自転車向けのためだけの案内版、車とは別の間隔で切り替わる専用の信号(奥に見える)が当たり前のように市内全域に用意されている。完全に扱いがクルマと一緒なのだ。
コペンハーゲンは川の町で、川岸の景色を眺めながら通勤、フィットネスなどを楽しんでいるが、そのそばにも自転車、歩行者完全分離の小径が全面的に整備されている。
クルマと扱いが同じ、ということは「専用橋」もある!
クルマと扱いが同じであることから、市街地の南側には自転車専用の橋が設置されている。専用レーン、というだけではなく「専用の橋」である。朝の通勤ラッシュ時を狙って動画を撮影したが、当たり前のようにどんどん自転車が橋を駆け抜けていく。さすがコペンハーゲン、といったところだが、実は専用橋はコペンハーゲンだけではない。
これはコペンハーゲンから電車で数時間かかく国内第3の都市「オーデンセ」の駅近郊だが、ここにも自転車専用橋が設置され使われている。また、滞在時にコペンハーゲン市の職員から聞いた話だが、独自の切替間隔で動作する専用の信号機は、自転車の速度が時速25km程度になるよう計算されており、また悪天候になりそうな時は赤信号の時間を短くして早く移動できるようにするなどしているという。この取り組みはコペンハーゲン市街地だけでなく、複数の都市でも実施されているらしい。単に自転車振興というだけでなく、戦略的に自転車を都市交通のひとつとして組み込んでいるということが言えるだろう。
少し長くなってしまったので、次の記事でも続けたい。今夜の「グラン・デパール」を楽しみながら話のネタにしてもらえれば幸いだ。