3年ぶりに開催となったジャパンカップだが、毎年のように参戦し、地元の人にもおなじみのあのチームも帰ってくる。所属選手全員が1型糖尿病患者で構成される「チーム・ノボ ノルディスク」だ。毎回来日時には、同じ病と向き合う患者さんと交流したり、一般の人に啓発するイベントを各種行っているが、今回はコロナ禍もあり選手関係者と観客の接触を避ける「バブル方式」での開催とあり、イベントも制限され、チームプレゼンテーション直前に開催されたオンラインでの交流会のみが行われた。交流会に参加したサム・ブランド選手から、患者さん以外の人にも心に響く言葉が多く聞けたので紹介したい。
「糖尿病になったのは人生で最高の出来事」と断言するサム・ブランド選手
今回の参戦メンバーのなかでも、エース格と目されるサム・ブランド選手(イギリス)が、14日夕方に行われた交流会に登場した。事前に募った患者さんからの質問に答えたり、発病したときの経緯や、向き合い方に対する自分の考え方を披瀝することで、患者さんに勇気を与えるための会だ。
バブル方式のため宿舎からオンラインで出席した同選手は、10歳の発病時からどのように病気と向き合ってきたか熱っぽく語ってくれた。様々なスポーツを楽しんでいた10歳の時に発病したときのことを、彼は「確かに大変なことで受け入れる必要があったが、最初から前向きに取り組めた」という。特に大きかったのは診断された後に、専門医にトライアスロンがしたいと申し出た時も否定されず、どうしたらできるか一緒に考えてくれたことだと語った。両親、専門医、周囲の人たちも含め、病気だからと言って頭ごなしに否定することなく、どうやったらできるのかを考える、考えてくれる環境にあったことがよかったと振り返る。
そして自身はその時も、現在も病気になったことをとても前向きに捉えている。まず自分ではできるだけ「病気」と言わず「症状」と言うようにしていると語り、また、この病気になったことは「特権だ」とも表現した。「向き合うのは簡単ではないが、解決不可能なものではなくマネージできるものであり、そして、この病気のおかげで病素晴らしい仲間に出会えたし、チームにも加入できた。そしてプロサイクリストになったことで、1型糖尿病に関するネガティブなイメージを、(チームや自身のパフォーマンスで)変えていける。新しい自分になったのだ」と力強く語った。
「アスリートとしての姿を見せたい」
オンライン交流会のあと、オープニングイベントであるチームプレゼンテーションに登場したチーム ノボ ノルディスク。観衆の温かい、そして大きな歓声を受けながら「お馴染みのチームが帰ってきました」というMCの紹介で出迎えられた。ジャパンカップ関係者、そして地元の観戦客の人たちにはこのチームの意義と「強さ」は十分に認識されている様子だ。この場面でもマイクを持ち、レースでの抱負を聞かれたサム・ブランド選手は「私たちのパフォーマンスを見せたい」と、患者としてより、アスリートとして目立ってみせるという意欲を見せてくれた。
関係者によると、今回、レース開催中の公式イベントはないが、日曜日のロードレース会場のブースではディスタンスを保ちながら交流できるようにするという。消毒やマスクなど、感染対策を行った上で彼らと交流することは可能なようだ。ぜひ現地で声援を送ってほしい。