2021年7月24日と25日、東京五輪の自転車ロードレースが東京府中市からスタートする。コロナ禍が収まらず、ファンの願いも虚しく沿道はすべて観戦自粛となった。スタート地点から多摩川をわたる是政橋までの約10kmはパレード区間となっていたが、当日は誰もいない沿道を「見せるためにゆっくりと走る」という、これ以上ない虚しい場面が展開されることとなった。いちサイクリストとして、ロードレースの楽しさを伝えるメディアとしてこれほど残念なことはないが、先日時間を作ってパレード区間を取材してきたので、当日ライブ中継を見ながら少しでも実感を持って楽しんでいただけるよう周辺情報や写真をお伝えしたい。
スタート会場は囲いがされたまま‥
スタート地となる武蔵野の森公園は、東京スタジアム(味の素スタジアム)の北、調布飛行場の滑走路を東隣に臨む、空の広い風光明媚な公園だ。普段から飛行場を発着する小型機を眺める地元住民などが憩う場となっていて、フォトジェニックな場所も多いため訪れる人も比較的多い。写真の通り、8月末までスタート地点付近は立ち入り禁止となって囲いがされている。当日囲いが外されるのかは不明だが、これがもし中継でも映ってしまうならかなり寂しいものがある。
ちなみに公園の向かい側(西側)は、日本でもっとも多くの国の言語が学べる東京外国語大学のキャンパスがある。各国代表を接遇する学生ボランディアの募集もされていただろうから、おそらくこの大学からも多くの学生が協力しているだろう。その意味でもスタート地の選定は絶妙なものだったといえる。
スタート地を出るとすぐあの人の生家跡が‥
スタート後、集団は公園内道路を少し東へ進み、人見街道へ出てさらに東へ進むことになるが、実は出てすぐの交差点に新撰組組長・近藤勇の生家跡がある。交差点に出たら必ず目に入る位置だ。建物は残っていないが、祀るための鳥居が建てられ、生家で使っていたであろう井戸がそのまま残っている。のちにも触れるが、このコース、特にパレードラン区間の裏テーマは「日本の歴史」で、各国の選手たちに走りながら日本の「時代」を感じてもらいたいのだろうと思えるほど、歴史的なスポットを織り込んでいる。
コースとはまったく関係ないが、東八道路をさらに東に向かったところに『吉田屋玄庵』、人見街道を府中方面へ下ったところから奥に入ったところに『たか志』という個人的におすすめの蕎麦屋がある。どちらも通り一遍の蕎麦ではなく、付近に来たらぜひ立ち寄ってほしい名店だ。
本当は、そこに「彼ら」がいたはず
その後集団は人見街道を少し東へ走り、東八道路に出たところで左折。「前原交番前」交差点から小金井街道に入り府中駅方面へ南下し始め、府中の森公園を左に見ながら右折、府中駅北の「桜通り」へ入っていく。先日この付近でいたずら目的なのか不明な「アスファルトばら撒き事件」があったが、基本的には低速巡行のはずなので影響は少ないはずだ。いずれにしろ当日は選手たちに危害を加えるような輩が出てこないことを祈る。
さて、桜通りは府中駅付近の商店街の中でも、若者向けのこぢんまりしたカフェやコミュニティセンターがあったりなど、駅前と比べて府中近郊で暮らす人々の生活が垣間見えるところなのだが、左右2車線しかない細い道路だなと思いながら走っていると、素晴らしいものが掲示されていた。
街道の両端のほぼすべてに、地元の子どもたちが描いた応援の横断幕が貼られていたのだ。もしかすると授業で書いたものなのかもしれないが、中には自転車競技のことを調べて描いたことがうかがえる力作もあった。もし沿道での観戦が自粛要請とならなければ、おそらく描いた子どもたちが沿道いっぱいにつめかけて、選手たちに声援を送ってくれたことだろう。中継で紹介されるか不明だが、選手には是非見てもらいたいものだ。
府中は、かつて東京の中心だった
桜通りを渡りきると、府中の鎮守である大國魂神社の参道、府中駅の駅前通りへと出てくる。自分も何度となく訪れているところだが、取材として改めて走ってみると、やはりコース設計者は選手たちに古くから日本に伝わっているもの、歴史的なものを知ってもらいたいという意図を持っているのだろうと感じた。
というのは「府中」という名前、確かに地名ではあるものの土地のことを表す固有名ではそもそもなく、「府(政庁)」「中(中央)」という意味。当時の武蔵国の中央政庁がここに置かれていたことを表すものなのだ。設置されたのはなんと645年の大化の改新直後とされているから、まさに古代、この付近は東京の中心だったのである。つまり選手たちは「古代の東京」を走り、そしてその頃から現在まで日本の象徴のひとつであり続けている「富士山」へ向かっていくというわけだ。素晴らしい趣向ではないか。
そして幕が上がるのは、この橋の上
大國魂神社の境内を走った選手たちは、若干下り基調の勢いのつく状態で、多摩川にかかる是政橋へとたどり着く。パレードランはここで終わり、橋を渡ったあとに迎える尾根幹のアップダウンで逃げに乗ろうと、激しいアタックが開始されるはずだ。その劇的なスタートの場面に、橋を舞台として用意することで、ふさわしい「場面転換」をもたらそうとする演出がうかがえる。おそらく空撮など取り入れて、ドラマチックにリアルスタートを伝えてくれるだろう。
ネット中継を楽しむための参考情報
必読、コース全編にわたる見どころ解説
さて、ここからはより実用的な情報をご紹介したい。コース沿線自治体がロードレースの見どころを解説してくれる冊子などを提供しているが、その中でも山中湖村が作成したものはかなり充実したものだ。山中湖村の国際交流員(地域おこしプランナー)であり、現在来日したフランス代表のマネージメントなども行なっている元プロロード選手のトム・ボシスさん(@tomsisbos)が、実走したうえでコース全般にわたり解説している。
オリジナル!コース全体をGoogleマップに編集
※2021年7月23日追記:当初掲載時より、ロード種目の中継URLが変更されました。現在は変更後のURLに修正しております。ご覧いただいた方にはご迷惑をおかけしました
自転車ロードレース種目放送予定
7月24日 10:50 – 18:18 男子ロードレース
※2021年7月24日追記:競技終了しました。録画中継は以下でご覧いただけます。
7月25日 12:50 – 17:38 女子ロードレース
※2021年7月25日追記:競技終了しました。録画中継は以下でご覧いただけます。
7月28日 11:25 – 13:03 女子個人タイムトライアル
※2021年7月28日追記:競技終了しました。録画中継は以下でご覧いただけます。
7月28日 13:55 – 17:43 男子個人タイムトライアル
MTB(マウンテンバイク)放送予定
7月26日 14:55~16:55
NHK BS1
7月26日 19:30頃ー
NHK Eテレ(休止の場合あり)
BMXレース
7月29日 14:30~15:45(予選)
NHK Eテレ
7月30日 9:55~12:20(準決勝・決勝)
NHK BS1
7月30日 13:10~14:10(準決勝・決勝)
NHK Eテレ
7月30日 22:00~23:00(準決勝・決勝/再放送)
NHK Eテレ
BMXフリースタイルパーク
7月31日 10:00~12:20(予選)
NHK BS1
8月1日 9:00~12:45(男女決勝)
日テレ
8月1日 10:00~12:20(男女決勝)
NHK BS1
トラック競技
8月1日 15:25 – 18:13
「男子チームパーシュート 第1ラウンド」「チームスプリント予選~決勝」
「女子チームパシュート第1ラウンド~決勝」
8月3日 15:30-18:10
「女子チームパーシュート」「男子チームパーシュート」「男子チームスプリント」(予選)
「女子チームパーシュート」「男子チームスプリント」(決勝)
フジテレビ系
8月4日 15:25 – 19:03
「男子チームパーシュート 決勝」「スプリント予選」「女子ケイリン第1ラウンド」
8月5日 15:25 – 18:53
「男子オムニアム」 「スプリント1/8決勝~準々決勝」「女子ケイリン準々決勝~決勝」
8月6日 15:25 – 19:18
「男子スプリント 準決勝~決勝」「女子スプリント予選~1/16決勝」「女子マディソン決勝」
8月7日 15:25 – 18:28
「男子ケイリン 第1ラウンド」「女子スプリント1/8決勝~準々決勝」「男子マディソン決勝」
8月8日 9:30-13:00
「女子オムニアム」
「女子スプリント」(順位決定戦/準決勝/決勝)
「男子ケイリン」(準々決勝/準決勝/決勝)
NHK総合(11:54~12:15サブch)
※最新の放送予定は更新される場合がありますので、https://www.gorin.jp/ または各テレビ局の番組表をご確認ください。