第107回ツール・ド・フランスは29日、フランス・ニースで開幕を迎えた。当地を発着地とする第1ステージは、降雨による路面状況の悪化で落車が続出するなか、最後のスプリントでアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー/UAEチームエミレーツ)がうまく抜け出し勝利。波乱の初日を制した。
コースプロファイル:ニース近郊の丘陵をめぐる156km
3週間にわたる旅の「グランデパール」は、フランスの一大リゾート地、ニース中心部を出発して北部の丘陵を周回する156km。アップダウンは多めだが標高は高くなく基本的には平坦であり、例年と違いコロナ禍のなかほとんど実戦をこなさずにここに臨まざるを得なかった選手たちにとって、かっこうの「リハビリ」になると思われた。
パレード走行後のアクチュアルスタート直後、最初に飛び出したのはミヒャエル・シェアー(スイス/CCCチーム)、シリル・ゴティエ(フランス/B&Bホテルズ – ヴィタルコンセプト)、ファビアン・グルリエ(フランス/トタル・ディレクトエネルジー)の3人。後ろの集団からはなんの反応もなく、この最初のアタックがそのまま承認され、最終局面前の山岳ポイント終了までこの3人がポイントを争った。
突然襲った雨で路面状況が急激に悪化、有力選手が落車で遅れる
3人を見送ったメイン集団は、終盤のスプリントまで淡々と進むかに見えたが、まもなく激しい雨が選手たちとコースを襲う。すぐに路面が濡れコントロール困難となり、コースの複数箇所で落車が発生。パヴェル・シヴァコフ(ロシア/イネオス・グレナディアーズ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス/ドゥクーニック・クイックステップ)、カレブ・ユアン(オーストラリア/ロット・スーダル)、ナイロ・キンタナ(コロンビア/アルケア・サムシック)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド/ユンボ・ヴィズマ)らが巻き込まれた。特にシヴァコフは体を強く打ち付けており、なんとか復帰したもののペースが上がらず、終始先頭から数分遅れて最後尾で走行した。エースのエガン・ベルナルへの貢献が期待される有力選手だけに、リタイヤになるようならチームにとって大きな痛手だ。
危険を感じた選手たちが自主的に速度を自制
この状況をに危険を感じた選手らは、年長のトニー・マルティン(ドイツ/ユンボ・ヴィズマ)の呼びかけに賛同し、周回コース終盤のニース市街地までほぼ横に並んで走行、自制して速度をおさえた。
しかしゴールスプリントへ各チームが向かおうとした矢先の残り3kmを過ぎた直後にさらに落車が発生。ルールにより残り3km以内の落車による遅れはカウントされないが、フランス人期待のティボー・ピノ(フランス/グルパマFDJ)やモビスターチームの複数人が負傷。明日以降のコンディションが懸念される。
スプリントはクリストフが伸び切って先着、マイヨジョーヌ獲得
後方で起きた落車を尻目に、生き残ったプロトンの前方はスプリントに入る。最終局面で、オープンになった目の前のゾーンを首尾よく使って伸びたベテランスプリンター、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー/UAEチームエミレーツ)が、マッズ・ピーダスン(デンマーク/トレック・セガフレード)の追走を振り切って先着した。初日の勝利ということで、記念すべき最初のマイヨジョーヌをクリストフが着用することになった。
明日の第2ステージは同じニース発着ながら、早くも1級山岳が2つも登場する山岳ステージ。落車で負傷した選手もいるだけに、総合争いに早くも影響が出るか注目される。
ツール・ド・フランス2020 第1ステージ(ニース モワイヤン〜ニース)結果
優勝 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー/UAEチームエミレーツ)3時間46分23秒
2位 マッズ・ピーダズン(デンマーク/トレック・セガフレード)
3位 ケース・ボル(オランダ/チームサンウェブ)