コロナ禍で一時期開催が懸念されていた、サイクルロードレース界最大のイベント「第107回ツール・ド・フランス」が現地時間29日夕に開幕する。27日、第1〜3ステージまでの発着地となるニースで出場全チームのプレゼンテーションが行われた。間もなく始まる祭典を楽しんでいただくため、全チーム、全選手をプレゼンテーション時の情報とともに紹介する。
感染対策のため入場制限、簡素化されたプレゼンテーションに
毎年ツールの開幕は「グラン・デパール」と称され、関連イベントとともに多くの観客で盛り上がるが、今年はコロナ禍のため入場制限、そしてイベント時間を短縮するため2チーム同時に紹介するなど様々な配慮が見られた。実はフランスではマスクは義務化されていないのだが(先日よりパリでは義務化)、選手に対しては事前のPCR検査と適時の消毒、レース開催前までは極力マスク着用を求めるなど、非常に厳しい条件を適用している。
しかしそんな中でも、注目選手や昨年各ジャージ獲得した有力選手が所属するチームでは、特別ムービーを流すなど、ツールらしい華やかな演出は維持された。ではプレゼンテーション登場順に全チーム、選手を紹介する。
チーム アルケア・サムシック
チーム アルケア・サムシック出場メンバー
ウィネル・アナコナ(コロンビア)
ワレン・バルギル(フランス)
マキシム・ブエ(フランス)
ダイエル・キンタナ(コロンビア)
ナイロ・キンタナ(コロンビア)
ディエゴ・ローザ(イタリア)
クレモン・ルッソ(フランス)
コナー・スフィフト(英国)
ワイルドカード枠で出場となるフランス籍のアルケア・サムシックだが、陣容はワールドチームと遜色ない顔ぶれだ。押しも押されもせぬエースは、もちろんナイロ・キンタナ(コロンビア)。ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャ覇者であり、ツールでも2度にわたり総合2位、新人賞、山岳賞も受賞済のトップロードレーサーが、今年、悲願のツール戴冠のためモビスターからあえて「格下」への移籍。絶対的エースの立場を得て、シーズン当初は大活躍した。しかしコロナ禍でコロンビアへ帰国中に、練習で膝を負傷。その後は調子があまり上がらず、今月のツール前哨戦「クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ」では最終ステージを棄権した。万全であれば必ず総合優勝争いに絡んでくるだけに注目だ。
また、地元フランスで長らく期待されているバルギルも、キンタナのサポートをこなしつつも、山岳ステージのいずれかで区間優勝を狙ってくるだろう。
NTTプロサイクリング
NTTプロサイクリング出場メンバー
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ)
ミヒャエル・ゴグル(オーストリア)
ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク)
マックス・ヴァルシャイド(ドイツ)
33年ぶりに日本企業単独のタイトルスポンサー参戦となるNTTプロサイクリング。今年はツールで区間優勝3回の実績を誇るボアッソンハーゲンで区間勝利獲得、そしてスプリンター向きのステージでは、先日のイタリア選手権およびヨーロッパ選手権も制覇した絶好調のジャコモ・ニッツォーロが勝利を狙う。コロナ禍で各国で外出制限中におこなれたバーチャル・ツールドフランスではチーム総合優勝を遂げているだけに、2人へのサポートも期待できる。
イスラエル・スタートアップネイション
イスラエル・スタートアップネイション出場メンバー
アンドレ・グライペル(ドイツ)
ベン・ヘルマンス(ベルギー)
ユーゴ・オフステテール(フランス)
クリスツ・ネイランズ(ラトビア)
ガイ・ニーブ(イスラエル)
ダニエル・マーティン(アイルランド)
ニルス・ポリッツ(ドイツ)
トム・ファンアスブロック(ベルギー)
このチームの注目はアンドレ・グライペル(ドイツ)。不振を囲った昨シーズンからの捲土重来のため、新興のこのチームに移籍、ツールでのスプリント勝利を狙う。
EFプロサイクリング
EFプロサイクリング出場メンバー
アルベルト・ベッティオル(イタリア)
ヒュー・カーシー(英国)
セルジオ・イギータ(コロンビア)
イェンス・クークレール(ベルギー)
ダニエル・マルティネス(コロンビア)
ニールソン・ポーレス(アメリカ)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)
山岳ステージおよび総合では実績あるリゴベルト・ウラン(コロンビア)、平坦ステージではアルベルト・ベッティオル(イタリア)を中心に勝利を狙ってくると考えられるが、今年は前哨戦のドーフィネで若手のダニエル・マルティネスが、伏兵ながら総合優勝を遂げ注目を浴びている。落車やコンディション不良で本命選手らが次々とリタイヤしたための「棚ぼた」とも言えるが、ほぼ山岳ステージのみだった今年のドーフィネでの成績だけに、ツールでもダークホースとして総合上位に名を連ねる可能性は十分あり得る。
CCCチーム
CCCチーム出場メンバー
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
シモン・ゲシュケ(ドイツ)
ヤン・ヒルト(チェコ)
ヨナス・コッホ(ドイツ)
ミヒャエル・シェアー(スイス)
マッテオ・トレンティン(イタリア)
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)
イルヌール・ザカリン(ロシア)
ツールにも慣れている中堅・ベテラン勢を揃えており、ステージ優勝を狙う布陣だ。その中でもグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)とマッテオ・トレンティン(イタリア)を押し立て、いずれかの区間で積極的に動いてくるだろう。
ボーラ・ハンスグローエ
ボーラ・ハンスグローエ出場メンバー
エマニエル・ブッフマン(ドイツ)
フェリックス・クロスチャートナー(スイス)
レナード・ケムナ(ドイツ)
グレゴール・ミュールベルガー(スイス)
ダニエル・オス(イタリア)
ルーカス・ペストルベルガー(スイス)
ペテル・サガン(スロベニア)
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)
今年もチームの実質的創始者であり不動の中心メンバー、近年のマイヨヴェールを独占するペテル・サガン(スロベニア)を盛り立てる陣容だが、展開次第では総合上位を狙える昨年4位のエマニエル・ブッフマン(ドイツ)にも期待が持てる。しかし彼もドーフィネで落車しており、現在どの程度のコンディションなのか明らかではない。このほか、マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)もステージ優勝を狙える実力者だ。
アスタナプロチーム
アスタナプロチーム出場メンバー
オマール・フライレ(スペイン)
ユーゴ・ウル(カナダ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン)
ヨン・イサギレ(スペイン)
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
アロルド・テハダ(コロンビア)
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)をエースに山岳コース、あるいはアップダウンの激しいサバイバルコースに強く、どんな展開でも対応できる経験豊富なメンバーが多く選出された。彼を総合上位、あるいは山岳賞ジャージに押し立てつつ、機を見てアシストの中からイサギレ兄弟、ルイスレオン・サンチェスらが優勝を狙ってくるだろう。