與那嶺恵理、新シーズンはワールドツアーチームで 移籍でトップカテゴリへ復帰

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日本女子自転車ロードレースの絶対王者である與那嶺恵理選手が、来季から新たにワールドツアーチームとして参戦する「HumanPowered Health(ヒューマンパワードヘルス)」に移籍すると発表した。今年の東京五輪にも出場し、全日本選手権を計11回制している押しも押されもせぬ第一人者の彼女にとっては、当然ともいえるトップカテゴリチームへの移籍だが、水面下では厳しい経緯もあったようだ。

今季は「職業病」に苦しみ、手術日前日に解雇通告

本人がプレス向け発表で明かしたところによると、東京五輪前に告白した通り、今季はプロサイクリストにとって職業病ともいえる「iliac artery endofibrosis」※1に苦しみ、シーズンオフに手術を受けることを決めていた。それを前提に前所属チームと契約延長の話が進んでいたが、手術前日に監督から電話で突然解雇通知を受けたという。すでに各チームの来季に向けての編成が終わりつつある9月末になっており、移籍交渉は難しい時期だったが「HumanPowered Health」チームからオファーを受け契約をまとめられたとのことだ。

なおこのチームは現「Rally Cycling」として知られるチームで、来季からは運営体制はそのままでスポンサーなどを拡充、「HumanPowered Health」チームとして来季から女子ワールトツアーチームとしてランクアップし参戦することが決まっている。そのため来季に向け、東京五輪金メダルのミーク・クローガー(ドイツ)などトップ選手との契約を進めており、與那嶺選手との契約もその一環だ。チームはプレスリリースで「日本選手権11回制覇のチャンピオンがチームのロースターを完成させた」と表現。彼女のキャリアと経験に期待していることを明かしている。実際、與那嶺選手はチームで最年長になるとのことだ。

與那嶺選手はチームの発表にあわせ自身のTwitterアカウントでも移籍を発表。「自分がレースに勝つことはできないが(チームが)レースに勝つことはできる。チームメイトの勝利に役立つことも私のモチベーションだ」とコメントし、新チームでの新しい役割に応える意向を示している。チームへは来年1月のキャンプから合流する。

※1 iliac artery endofibrosis
日本での症例研究は進んでおらず正式な病名はないが、直訳すれば「外腸骨動脈の線維化症」。サイクリストやスピードスケートの選手に多く見られる病気で、脚に血液を送る外腸骨動脈の一部が硬くなり、血液を送るために必要な柔軟性が失われたり、血管自体も狭くなること(医学的には「繊維化」という)で血流が阻害される。症状としては痺れや痛みが現れ、アスリートレベルでの強い運動下では出力低下が起き、選手としてのパフォーマンスを維持できなくなることが多い。原因としては屈曲姿勢が多くなることがあげられるが、医学界で正式に認められるような研究はない。治療法としては繊維化が起きている血管の部分を切除し、体の他の部分の血管で取り替えることが主流となっており、自転車選手の多い欧州では専門医が存在する。

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